「僭越ですが、世界で受け入れられていると思った」
10月に開催されたファーストリテイリングの2019年8月期決算会見で、柳井正会長兼社長はこう語っていました。
海外ユニクロ事業が大躍進を続けています。売上高が1兆円を突破し、営業利益でも初めて国内事業を抜いたと報じられました。
国内事業では足踏みが続き、19年8月期の下期は夏物商品が好調でなんとか通期での増収を確保したものの、単価が高い冬物の売上が落ちた上期の影響が大きく、通期の営業利益は13.9%減の1024億円と大幅減益となりました。
海外売上好調の原動力は何なのか―
今回の【ビジネスEYE】では、海外ユニクロ好調の理由に迫ってみましょう。
(参考:日本経済新聞/2019年10月10日)
(1)好調の原動力は積年の努力
ユニクロ(ファーストリテイリング)の海外進出の歴史は、実はとても長いです。2001年にロンドンに海外の第1号店舗をオープンし、中国での初出店は、2002年の上海。その後も欧米やアジアに展開し、2019年8月末のユニクロ事業の世界店舗数は2196店舗にのぼります。
10月にはインドに進出し、ニューデリーに1号店をオープン。成長市場と位置づける中国本土や香港、台湾では、2019年2月末の768店から、2021年8月期に1000店超に増やす予定といわれています。
国内での好調を軸足に、地道に海外出店を進め、2016年には、海外の店舗数は国内を上回っていたので、今回営業利益が上回ることになったのも納得の結果と言えるかもしれません。
かつて、社長兼会長の柳井氏は「2020年にグローバルでナンバーワンのアパレル企業になる。売上高の8割は海外で叩き出す」と大きな目標を掲げていましたが、10月の会見では「いよいよ世界に出ていくことが始まるなという実感を持った」とも話していました。
ナンバーワンはまだ先の話かもしれませんが、これからも引き続き、ZARAを擁する世界一のアパレル企業、スペインのインディテックスの背中を猛追していくでしょう。
新規出店したインドでは、すでに先述のZARAやスウェーデンのH&Mも展開されており、安定した人気を獲得していると聞きます。インドネシアやフィリピンでの好調にならって、大型ショッピングモールへ出店することで、中国に次ぐ巨大市場での存在感をアピールしていきたいのでしょうね。
(2)目指すは国内復権か
中国本土や香港、台湾での成功は、SNSを活用したデジタルマーケティングや日本の人気キャラクターと組んだブランド戦略で若者を中心に支持を獲得して掴んだと言われています。
しかしながら、消費増税など明るい話題がない日本国内では、持続的な成長を目指すべくどんな手を打っていくのでしょうか。
その起爆剤はEコマース(電子商取引)事業を中心に展開していくそうです。2019年8月期の国内のEコマースの売上高は32%増の832億円。国内ユニクロ事業の売上構成比(EC化率)の9.5%を占めるまでに拡大しています。今期も約30%の増収を見込んでおり、国内復権のきっかけになる可能性を見出しているようです。
国内の店舗は増やさず、Eコマースを拡大したとすると、まずは物流費だけが膨らむこととなり、そう単純に成功へのカギとはならないでしょう。在庫の適正化や物流費率の改善などにも注力していく必要があり、難しい舵取りを強いられるかもしれません。
リクルートのように買収で海外売上高比率を伸ばすことなども視野に入れるべきだと思います。
日本市場が縮小傾向にあるなか、海外市場においてはまだまだ夢があると感じています。これまでは海外売上高比率の少なかったサービス業や外食産業も、2桁の伸びを記録するなど成長の足掛かりをつかもうとしています。
ユニクロの次期決算では、どこまで海外部門の営業利益が伸びるのか、関心が集まりそうですね。
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