米ゼネラル・エレクトリック(GE)のジャック・ウェルチ元会長が2020年3月1日死去しました。
約20年の在職中に株価を30倍にした手腕は「20世紀最高の経営者」「伝説の経営者」「千年に一人の経営者」の名声を得るほどでした。
選択と集中、リストラクチャリング、フラット型組織、シックスシグマ…
90年代の米国経済を支えた数々の経営理論や戦略は、停滞色が強まる当時の日本経済にとって輝いて見え、中でも「ジャック・ウェルチ」はそのような米国企業の象徴でした。
称賛され、社員からは畏怖され、投資家からは愛された経営者でしたが、ウェルチ後のGEは苦難が続き、今も脱したとは言い難い状況です。
日本やアジアでは今でも彼の「信者」が数多くいますが、あまり指摘されていなかった点、
伝説の経営者の“影”の部分を見てみます。
(参考:日本経済新聞/2020年3月4日)
1.引退後の世間離れした特別待遇
2001年に引退したウェルチ氏ですが、その翌年の離婚訴訟では同氏のセントラルパークを見下ろす高級マンションの住宅費や食費、
ゴルフ場の会員権などをGEが負担し続けている実態が暴露されました。
特別待遇を受け入れたのは「退職手当を全て現金で受け取るよりも、会社にとって安上りと考えたためだ」と説明し特別待遇の放棄をしましたが、米マスコミからは「過剰な便宜提供」と批判を浴びました。
この特別待遇に、社内や取締役からの反対の意見はほとんどなかったといいます。
企業経営を管理監督する仕組み、いわゆるコーポレート・ガバナンスに大きな課題を残した出来事ですが、その約20年後に日本で起きた日産自動車のゴーン氏の事件をみるとその課題の解消にはまだまだ時間がかかりそうです。
2.結果を残せなかった後継者
ウェルチ氏引退後から今日まで、なかなか立ち直れない不振が続いているGEですが、その要因の一つは力量のある後継者を残すことが出来なかったことにもあります。
ウェルチ氏が後継者であるジェフ・イメルト氏にCEOの座を渡した2001年9月には米同時多発テロが発生しGE主力の航空機エンジン事業が急減速。ウェルチ氏の
拡大路線の修正を迫られ、いくつかの事業の売却を余儀なくされましたが、極めつけは2008年のリーマン・ショックでした。
ウェルチ時代に進んだ金融事業の拡大でしたが、手がけていた金融ビジネスは比較的リスクの高いものであり、その傷跡は深く残りました。2015年1~3月期決算では金融事業に関する160億ドルもの特別損失を計上、結果を残すことなくイメルト氏は2017年に退任します。
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GEを株式時価総額で世界トップを争う企業にまで成長させたウェルチ氏ですが、同氏のレガシーには汚点も残った形になります。
こと後継者については、世の中のほとんどの経営者が悩みを持っているのではないでしょうか。
現在のGEは金融事業の失敗を経て、製造業への回帰とともに、シリコンバレーのスタートアップを模倣しデジタル化を推進しています。
過去に禍根を残した後継者育成の問題ですが、構造改革を行った同社がどのように本問題の解決策を見つけられるのか、今後に注目したいですね。
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