2020年の税制改正により、年末調整の控除に関する内容が変更されました。
税額の観点からは、収入金額が850万円以下の個人には殆ど影響がありませんが、
税額以外の面では大きな影響が想定されています。
①基礎控除の改正(基礎控除の引上げ)
②給与所得控除の改正(給与所得控除の引き下げ)
③所得金額調整控除の創設
④配偶者・扶養親族等の合計所得金額要件等の見直し
これら4つの税制改正により、控除額や申請様式が大幅に変更・複雑化することで、
年末調整業務にかかる業務負担の増加が見込まれています。
そこで進んでいるのが年末調整の「電子化・ペーパーレス化」です。
控除証明書等はこれまでは紙の書面のみの扱いでしたが、今後は条件を満たせば全て
電子データで扱うことができるようになります。また国税庁が無償で年末調整控除申告書
作成用ソフトウェアを提供することも発表されています。
今回のビジネスEYEでは、複雑化する年末調整業務の負担を軽減できる「電子化」の
導入について注意点を含めて解説いたします。
年末調整業務の電子化とは?
これまでは年末調整手続きに係る控除証明書等は、従業員から書面で提供を受ける
必要がありましたが、税制改正により令和2年分の年末調整からは、一定の条件を
満たせば、すべて電子データで受け取ることができるようになります。
電子化・ペーパーレス化を実行するには、市販のシステムを利用することもできますし、
国税庁からも、2020年10月に年末調整控除申告書作成用ソフトウェア(年調ソフト)が
無償提供される予定です。
どこまで電子化を進めるかは会社の判断になりますが、国税庁からは電子化後の
主な変更点として、以下の内容が紹介されています。
(従業員)
・年末調整申告書の作成※・・・手書き⇒自動入力
・控除額の計算・・・・・・・・手計算⇒自動計算
(勤務先)
・控除額の検算・・・・・・・・必要⇒不要
・給与システム等への取込・・・手入力⇒不要
※控除証明書等が保険会社からデータで提供される予定
デジタルサービスの活用による業務簡略化をご検討ください
クラウド型の年末調整システムなどを利用し電子化を行うことで、従業員の申告書提出
から、担当者のチェック・差し戻しまでオンラインで完結でき、業務の効率が飛躍的に
向上します。
これを機に、メリットの多い電子化の検討を始める企業も多くあると思いますので、
導入前の注意点をご紹介いたします。
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■①年調ソフトを検討している場合:不明確な部分が多い
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年調ソフトについてどのようなシステムなのか詳細の情報公開がまだ行われていません。
従業員がWeb上で操作するのか、パソコンにインストールするのか、スマートフォンの
アプリケーションとして配布されるのかさえ分からず、不明確な部分が多いです。
また、導入初年度は実績もないことから安定的に稼働するのかどうか不安が残ります。
また、マイナンバーとの連携も年調ソフトの特徴ですが、ICカードリーダーライタなど
ハード面での準備が必要になってきます。
①保険会社等から、控除証明書等を電子データで受領(従業員)
②上記の電子データを年調ソフトにインポート(従業員)
③控除額が自動計算された年末調整控除申告書のデータを勤務先に提出(従業員)
④従業員から提出されたデータを給与システム等にインポートして年税額を計算(勤務先)
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■②電子化対応をする場合には8月までに税務署への届出が必要
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従業員から年末調整申告書に記載すべき事項を電子データにより提供を受けるためには、
勤務先があらかじめ所轄税務署長に「源泉徴収に関する申告書に記載すべき事項の
電磁的方法による提供の承認申請書」を提出し、その認証を受ける必要があります。
2020年10月以降に提出を受ける年末調整控除申告書について、電子データにより
提出を受けるためには、2020年8月までに申請書を提出しなければなりません。
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■③控除証明書発行主体の電子データ提供
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銀行や保険会社、税務署といった控除証明書等発行主体の全てが電子データの提供に
対応しているとは限りません。
控除証明書等のデータ提供は義務ではないため、全ての保険会社と金融機関が、
2020年10月までに控除証明書等のデータを提供できるとは限らないといわれているため
一部は紙での資料提出も残ることが想定されます。
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今後は保険料などの控除証明書のデータ管理も加速していくでしょう。
注意点はあるものの、デジタルサービスを活用することで、複雑化し実務負担が増える
年末調整業務の負担を確実に減らすことができるでしょう。
デジタルサービスの導入についてお悩みがある場合にはぜひ、日本クレアス社会保険
労務士法人にご相談ください。
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