2019年2月、大阪のコンビニエンスストアチェーン加盟店が時短営業に踏み切った報道は、人材不足に端を発した本部とフランチャイズチェーン(FC)の衝突が
表面化され、コンビニを巡る様々な問題、課題についての議論を巻き起こしました。
その結果、コンビニ市場の飽和論が改めて囁かれ、「年中無休」「24時間営業」というコンビニの存在意義を問い直すところにまで及んでいます。
提供するサービスを拡充・拡大し、社会・生活インフラとしての役割を高め、消費者の利便性を追求し成長してきたコンビニが、これまでに克服してきた人材問題と、現在直面している「24時間営業を止められない」利害関係について考えます。
(参考:日本経済新聞/2020年2月3日・2月5日)
1.コンビニがこれまでに壊してきた「人材の壁」
コンビニは当初、地域にある個人商店の業態転換、つまり個人商店主がそのままFCオーナーとなるケースが殆どでした。小売店主の所有地を利用できる、酒やたばこなどの小売免許を持つ、というメリットがあり、このオーナーの獲得を巡って出店競争が繰り広げられました。
市場への相次ぐ参入により個人商店主といういわば“資源”が枯渇するようになると「脱サラする個人オーナー」へとターゲットを移し新規出店を増加。次いで企業をFCオーナーにさせる手法も取ることで、オーナー不足という“壁”を克服してきました。
しかし、現在のコンビニが直面している壁は、「FCオーナーの高齢化」「慢性的な従業員不足」といった新たな人材問題であり、冒頭で紹介したような衝突が生じるほどですが、時短営業をすれば解決するという単純な問題ではありません。24時間営業の裏には消費者には見えない利害関係があるためです。
2.「24時間営業を止められない」という壁
これまでコンビニが克服してきた“壁”は、本部と店舗のみで解決できるものでしたが、現在の問題は複雑な利害関係、特に、非物販サービスのサプライヤー(供給者)との取引関係を前提としているからです。
集客力向上を目的とした行政、電子商取引、金融といった非物販サービスの導入は顧客層を拡大するのみならず、サプライヤーの新規開拓につながりました。本部はこれらサプライヤーからの代行手数料を得ることで、収益源を店舗だけではなくそのシステムを利用するサプライヤーなどに分散し、成長の原資を得てきました。
24時間営業を止めるということは、このようなサプライヤーに対して、代行手数料に基づく取引の価値を低めることになりかねず、この利害関係が時短営業を決断できない理由の一つになっています。
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消費者の目線で見るとコンビニは今や社会・生活のインフラとしての役割となっています。
また、営利・非営利、製造業・サービス業を問わず本部の取引相手であるサプライヤーにとってもコンビニエンスストア・システムの生み出す「便利さ」を享受しています。
反面、経済産業省の「コンビニ調査2018」では、61%のオーナーが人手不足と回答しており、コンビニの便利さの恩恵を受け続けるにはこの人材不足の壁を克服することが急務です。
コンビニは今、年中無休・終日営業について再考が迫られる、事業や収益モデルの転換期にあるのではないでしょうか。
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