買い手に「好機」-株価下落で相次ぐM&A中止や延期(Vol.474)


新型コロナウイルスの影響による世界経済と金融市場の混乱で、M&A(合併・買収)は中止や延期が相次いでいます。
調査会社リフィニティブによると3/22~28の週の件数は世界全体で521件にとどまり、約15年ぶりの低水準となりました。

特に欧州や米国の落ち込みが顕著で、新型コロナウイルス感染が拡大している地域と重なっています。

コロナ危機に伴う全面株安がM&Aの実行に歯止めをかけている状況ですが、買い手にとっては「好機」であり、EUの委員会ではすでに対策に動き出しています。

今回のビジネスEYEでは、新型コロナウイルスがもたらしているM&Aへの世界的な影響を見てみます。

(参考:日本経済新聞/2020年4月2日)

 

ゼロックス、HP買収断念で1兆円近いのれんを回避

ゼロックスは時価総額が自社の3倍もある、パソコン・プリンター大手HP Inc.の敵対的TOB(株式公開買い付け)に向けて、米銀行大手などから総額億240億ドル(約2兆6,000億円)の融資の約束を取り付けていましたが、3/31に撤回しました。

1株24ドルで買い付けていましたが、コロナ危機に伴う全面株安の影響でHP株は17ドル台まで下落。買収に踏み切っていれば、高値で株を取得することになり、1兆円近いのれんが発生する可能性がありました。

国内外で相次ぐM&Aの中止や延期

米通信大手のAT&T Inc.は、スポーツ専門地方局の売却を保留しました。その理由は、買い手の資金調達難やプロスポーツの試合中止により広告収入が下落しているためと言われています。

日本では、神戸製鋼所が子会社株式の一部をファンドに売却する予定でしたが、ファンドによる新型コロナウイルスによる環境変化を理由にした延期の申し出を受け、予定を3/31から6/30に延期をしました。

なお神戸製鋼所は、2020年3月期に投資有価証券の評価損150億円を特別損失に計上すると発表しています。世界的な株安の影響を受け、保有株や出資先企業の株価下落による評価損の計上は、川崎汽船や東レ、ニプロなども発表しています。

株価の下落は買い手には「好機」

株価下落は買い手からすると割安で企業を手に入れることができる「好機」です。
実際に、自国企業が海外勢に買収されることを警戒する政府も出てきており、EU(欧州連合)の委員会は、外資の管理強化を促すガイドラインを策定しました。

国民生活に重要な医療やインフラ関連企業が、外国のヘッジファンドなどに安値で買収される事態を防ぐことを狙いとしています。

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株価が下がれば再編の好機にもなり得ますが、新型コロナウイルス感染症の収束が不透明な現状ではM&Aの動きが止まっているというのが実情でしょう。

私がメディアで連載しているコラム「会計士 中村亨の経営の羅針盤」最新回では、コロナ不況にどう立ち向かうか?をテーマに執筆を行いました。その中でご紹介した不況に立ち向かう方法の一つ、「不況をチャンスと捉えて事業や戦略の構築に挑む」はまさに「買い手には好機」に繋がるのかもしれません。

コラムでは、ユニクロを例にとった「トレードオフの解決」とマネジメントの本質についても触れています。
よろしければぜひご覧ください。

●〇●「会計士 中村亨の経営の羅針盤」第1回-コロナ不況にどう立ち向かうか?
https://kaikeizine.jp/article/14695/

 

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