コロナが招く企業の寡占化(Vol.485)


中村 亨の【ビジネスEYE】です。

「今までそこにあった需要」が、新型コロナウイルス感染拡大防止のために政府が主導する経済活動の自粛により強制的に奪われてしまいました。世界中で多くの企業が存亡の瀬戸際に立たされています。

深刻な打撃を受けているのは長短のリスクマネーを呼び込み、企業の成長を促してきた資本市場も同様です。ゴールドマン・サックス日本法人の持田昌典社長も「先行き不透明感が長く残るという点で、今回の危機はリーマン・ショックを上回るだろう」と、景気の長期低迷に身構えています。

世界的に深刻な景気後退が起こった場合には、資本力のある企業による市場の寡占化が懸念されます。今回の【ビジネスEYE】では、寡占化に陥った市場での勝敗のカギ、そして日本企業の立ち位置について見てみましょう。

(参考:日本経済新聞/2020年5月12日)

 

■寡占化が進む市場での勝敗のカギは?

2008年リーマン・ショックの際は、過剰な負債を背負い込んだ金融機関(ウォール街)
に問題の根がありました。一方、今回の危機は実体経済(メインストリート)を直撃する
もので、世界的に深刻な景気後退をもたらします。

実体経済を直撃する深刻な景気後退が起こってしまうと、需要の奪い合いがより
激しくなり、踏ん張る企業と水面下に沈む企業に明暗が分かれてしまいます。その結果
進むのが、さまざまな市場での「企業の寡占化」です。

このような厳しい実体経済下で、企業の勝敗を分けるカギとなるのは「資本力」です。
現預金などの手元流動性が潤沢で資金調達をする余力のある企業、すなわち資本力のある
企業は将来の事業拡大に備えられ、反対に資本力の無い企業は持久戦に耐えることが
できません。

■次世代技術の分野ではすでに寡占化が進行

実際、すでにこの現象は技術革新のスピードが速い、次世代技術の分野で見られています。
自動運転の分野では米ウェイモが3月に大型の資金調達に成功し事業拡大の布石を打って
いるのに対し、財務基盤で見劣りする米ズークスは約120人の解雇を4月に行っています。

ライバル企業を出し抜くことができれば、需要が縮んだとしても相手の陣地を奪い
残存者利益を得ることが可能です。寡占化を進めるほどそうした利益は拡大していく
ことでしょう。

市場での陣取りの動きは、国際的にも水面下ですでに起こっています。
コロナ禍でも比較的余力のある中国企業は、株安で時価が減った欧米企業の買収を
目論んでおり、これに警戒する欧州連合(EU)は、域外からの企業買収に対する規制を
強化しています。

それでは、アフターコロナで企業の寡占化が進む場合、日本企業の立ち位置はどうなる
のでしょうか?

■アフターコロナでの日本企業の立ち位置

日本企業の特徴として、手元資金を厚めに持ち、財務が堅固という特徴があります。
そのため相対的に優位な立場にあるといえますが、手厚い資本を頼りに嵐が過ぎ去る
のを待つだけだとしたら、日本企業の先行きは危ういでしょう。

既に報じられているとおり、6月1日、アサヒグループホールディングスはビール世界
最大手アンハイザー・ブッシュ・インベブ(ベルギー)の豪州事業の株式取得が完了
しました。需要減は引き続き懸念されますが、新たな収益基盤をつくる戦略は変えない
アサヒHDの姿勢の表れです。

アフターコロナの新たな時代の競争条件を見極め、資金をどう活用していくのか。
日本企業も中長期の経営判断が求められています。

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日本の中小企業に目を向けますと、後継者不足、人口減少で需要減少、人手不足、と明るい話題がない中でのコロナショックです。持久戦に耐えられなかった企業の離脱は想像に難くないですが、逆に言えば「ライバルもいなくなる」ということです。

外部のメディアで連載しているコラム『会計士 中村亨の「経営の羅針盤」』では、中小企業が生き残って多少は成長するための戦略として「多角化」について解説をしています。

もともと日本の経営者は、企業の存続を重視します。経営の安定化を重視した結果多角化の戦略を取る傾向にあります。多角化戦略の元での具体的な戦術とは?よろしければぜひコラムをご覧ください。

▽会計士 中村亨の「経営の羅針盤」-大廃業時代のススメ「事業や戦略の再構築①」
https://kaikeizine.jp/article/16003/

 

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