中村 亨の【ビジネスEYE】です。
東京商工会議所の調査(4月7日~5月25日、1,111社が回答)によると、緊急事態宣言の発令後、テレワーク(在宅勤務、モバイルワーク、サテライトオフィス勤務を合わせた総称)の実施企業は67.3%にのぼりました。
反面、緊急事態宣言下では多くの保育園の休園や登園自粛が広がったため、育児と在宅勤務の両立にあたっての課題が見えてきました。育児中の親からは「子供をそばにおいての在宅勤務だと成果が半分ぐらいになる」といった悩みの声も聞かれました。
「子どもがいる社員などを対象にした特別休暇の付与」(日本IBM)や「“災害特別休暇”の適用範囲の拡大」(オリックス)など、社員が前向きに仕事に取り組めるための環境や仕組みづくりを進める企業もあります。
今回のビジネスEYEでは、在宅勤務の課題と「コロナ後」を見据えた組織づくりについて見てみたいと思います。
(参考:日本経済新聞/2020年4月15日)
■在宅勤務の課題とは?
在宅勤務では働く様子が見えないため、成果重視の風潮が強まると指摘されています。あわせて管理職には、個々の事情をきめ細かに把握し、チームでカバーし合える環境を構築することも求められます。
育児と在宅勤務両立の課題に対処するため、勤務か休暇の二者択一ではなく、組織内のコミュニケーションの工夫を行う企業も増えています。
「オンライン上でプライベートの事情も気軽に打ち明けられるツールの導入」(家事代行サービスのCaSy)、「在宅勤務中の子育ての悩みなどを社員同士で共有する場をオンライン上に設ける」(クックパッド)はその一例です。
■「コロナ後」を見据えた組織づくり
そもそも在宅勤務を含む「テレワーク」は、多様な働き方を実現するための制度です。緊急事態宣言により在宅勤務と子育ての負担が親に同時にかかっている今回の状態を基準にテレワークを評価すると、「働く場所を自分で選んで集中的に働く」という本来のテレワークの目的や価値を見失ってしまう恐れがあります。
100年に1度の緊急事態をきっかけに半ば強制的に不十分ながらもテレワークを運用せざるを得なかったとはいえ、「従業員の働き方の選択肢が増えた」という点は大きな成果でしょう。一方で実際に運用が広がったことで浮かんだテレワークの課題もあります。
コロナがもたらした「働き方の変革」が、「働き方の常識」に変わる日がそう遠くない未来にやってくるかもしれません。
どこまで働き方の多様性に対応できるのか、企業には「コロナ後」を見据えた組織づくりが問われているのではないでしょうか。
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