未払い残業代や未払い退職金を支給する場合の税務上の留意点(Vol.496)


中村亨の「ビジネスEYE」です。

同一労働同一賃金に関して、注目の判決が続いています。
日本郵便や大阪医科大、メトロコマースの判決を見ると、最高裁は就業形態による正規社員と非正規社員の待遇格差を認めるケースと認めないケースをともに下しています。これは日本型の特権的待遇が過渡期に来ている象徴と言えるでしょう。

さて、2020年4月1日から大企業を対象に施行されている(中小企業は2021年4月から適用)同一労働同一賃金ですが、これに伴い、過去の未払いの退職金や残業代などを支給するケースが増えてきているようです。

今回のビジネスEYEでは、このような支給があった場合の留意すべき税務上の取扱いをご紹介します。

 

■追加支給が発生した場合の税務上の取扱い

非正規社員に対する過去の未払の賞与や退職金、残業代などの追加支給が発生するケースの税務上の取扱いについてまとめてみます。

訴訟などがあった場合、会社側はその名目を「解決⾦」等として⽀給するケースもあります。この場合でも、
【税務上はその名目にかかわらず、「給与(賞与)」になる】と考えられます。

なお、支給方法については、以下のケースが挙げられます。
①「⼀時⾦(精算⾦等)」として⽀給する
②「一定の分割支給(過去分の給与)」として⽀給する

■支払う会社側の法人税法上の取扱い

過去の労働に基因するものですが、⽀給額の決定が当期に債務として確定していると考えられるため、①の一時金支給、②の分割支給にかかわらず、支給した事業年度における損金になると考えられます。

■支給を受ける個人側の所得税の取扱い

①の⼀時⾦⽀給であれば当期に⽀給することが確定した賞与に該当すると考えられます。
そのため,源泉徴収も賞与として計算されます。

②の分割支給の場合は、分割の回数等にもよりますが、「給与」としての源泉徴収になるものと考えられます。

なお、実営業時間に基づく残業代として支給する場合は、①の一時金支給、②の分割支給にかかわらず、過年度分の給与になると考えられます。
よって、残業代を⽀給した時点で過年分の年末調整計算をやり直す必要があります。

また、源泉徴収票(法定調書合計表を含む)及び、住民税の給与⽀払報告書を訂正して各税務官庁へ再提出しなければならないこととなります。

(参考:税務通信3470号・3524号)

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