中村亨の「ビジネスEYE」です。
東京証券取引所は2022年4月に東証1部・2部・ジャスダック・マザーズの4市場を廃止し、新たに「プライム」「スタンダード」「グロース」の3市場体制へ移行します。
市場再編の狙いは「上場企業の持続的な成長を促し、市場の魅力を高めること」(日本取引所グループ 清田瞭 最高経営責任者)ですが、グローバルの投資マネーを呼び込みたいという意図が見て取れます。
また、再編に伴い新規上場や上場維持基準も見直されます。投資家の活発な売買を確保する流通株基準や、政策保有株の縮減を促すガバナンス基準などです。今回のビジネスEYEは、東証市場再編のポイントをご紹介します。
(参考:日本経済新聞/2021年1月21日・22日・23日)
■投資家にとって分かりやすい区分へ再編
東証が市場再編に踏み切った理由は、現在の4市場の区分が投資家にとって分かりにくくなっているためです。
東証1部は2,000社を超える企業が上場していますが、時価総額が100億円を下回る企業も多くあります。中堅企業向けには東証2部とジャスダックがあるものの、各市場間の変更基準もまちまちです。
そこで、再編によって変わる区分では、流通時価総額を反映するなど、投資家にとって分かりやすいものとなっています。
■売買のしやすさ重視
新しい上場基準では、市場で実際に売買できる「流通株」を重視するため、時価総額が大きくても一般投資家が活発に取引できない銘柄は上場基準に抵触する可能性がでてきます。
東京市場の上場企業は、米国などと比べて相対的に時価総額が小さく流動性が低い銘柄が多いことが、海外の機関投資家に敬遠されている理由の一つになっていましたが、活発に売買できるようにすることで、幅広い投資家を呼び込む狙いがあります。
再編後の上場基準の一つ、時価総額全体に占める流通株比率は、プライムが35%以上、スタンダードとグロースはいずれも25%以上となっています。
■ガバナンスコードも強化
東証と金融庁が改訂を予定しているコーポレートガバナンス・コースでは、社外取締役の規程も強化され、プライムでは「2人以上」から「取締役全体の3分の1以上」となる見通しです。
女性や外国人、中途採用者など人材の多様性確保も焦点となります。各市場のガバナンス基準では、プライム用の指針以外の部分ではスタンダードは全適用、グロースは基本原則を適用することとなっています。
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移行のスケジュールは、2021年6月末日を移行基準日として、7月末を目途に上場維持基準に適合しているか否かを通知されます。2021年9月から12月までが上場会社による市場選択手続日程となり、2022年4月4日が一斉移行日となる予定です。
市場再編によって、投資家には株価の変動、特に東証1部から実質的に降格する銘柄の下落など、少なからず影響が出るでしょう。しかしこの市場再編によって株式の流動性が高まり、外国人投資家の資金も集まることで市場が活気づき、最終的には投資家にとってメリットの多いものになると思われます。
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