中村亨の「ビジネスEYE」です。
「給与デジタル払い」が報道されました。(日経新聞2021年1月27日)
企業の従業員に対する給与の支払いを、銀行口座を介さずスマートフォンの決済アプリなどに振り込む方式を認めるもので、今春解禁されるとあります。
銀行は生活基盤となる給与振込口座を通じて、個人のお金の流れを支えてきましたが給与のデジタル払い解禁は従来の銀行のビジネスモデルに影響が出る可能性があります。
今回の「ビジネスEYE」では給与のデジタル払いの政府の検討状況について見てみましょう。
■デジタル払いの対象となる資金移動サービスとは?
銀行以外で内閣総理大臣の登録を受けた事業者が行う送金サービスです。
具体的にはネットや通信系企業が提供している「○○ペイ」といったおなじみの電子決済などが該当します。
資金移動サービスの利用のシーンとしては、ショッピングの代金の支払いはもちろん、個人から個人への送金もできます。(飲食店での割り勘の際、スマートフォンアプリで代金を幹事に送金し、そのまま代金の支払いに利用することもできます)またイベントが中止になった場合のチケット代の返金の手段として企業から個人への送金に利用したりすることもできます。
送金の上限額は、業者ごとに異なり1回100万円以下となっています。(今年の夏に法改正により、認可を受けた事業者のみ上限額が撤廃される予定です)
資金移動サービスにかかる手数料は、送金手数料のほかに、口座(アカウント)への入金手数料がかかる場合もありまが、多くの場合、銀行の手数料よりも安く抑えられています。
■現在の給与の支払い方法
労働基準法24条で賃金は、通貨で直接労働者に全額を毎月1回以上、一定の期日に支払うことが定められています。
原則として通貨となっていますが、本人の同意をとることで、銀行口座への振込入金による支払いが可能になりますが、この部分の改正が検討されており、資金移動業者の口座が対象になることが議論されています。
2020年7月に閣議決定・発表された「成長戦略フォローアップ」においてデジタルマネーの給与支払いの解禁が記載され、実現に向け厚生労働省の労働政策審議会でも議論されています。
■労働政策審議会の具体的な検討状況
金融機関と異なり規制が緩い資金移動業者が破綻した場合の資金保全の仕組などが議論され、給与の支払いについてはどの業者でも対象になるのでなく、破綻時に備えた保険の加入、適時の換金性、不正引出しの対策・補償などの基準を満たした業者のみを対象とすることで審議が進んでいます。
また給与の支払い先を資金移動業者にする際には、労働者の同意をとることを前提とし、銀行口座の支払いと併用することも議論されています。
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コロナの影響で直接手渡しができず、今年のお年玉を電子決済で渡された方もいらっしゃるようです。多様な働き方とあわせて多様な給与の支払い方についても社内で検討することが近い将来求められてくるかもしれません。
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