中村亨の「ビジネスEYE」です。
経営者向けの生命保険を利用した節税対策は、2019年以前は一般的に行われてきました。
これらは払込保険料の大部分が返戻金として戻ってくるにもかかわらず、払い込み時には全額損金で経理処理ができるというもので、これを国税庁が問題視するようになりました。
ついには2019年2月にこれらの節税保険を封じ込めるルールの見直しを打ち出し、各保険会社は全額損金となる節税保険を一斉に販売停止にするという激震が起こりました。当時、発表が2月14日だったため、生保業界では「バレンタインショック」とも言われました。
その「バレンタインショック」に続き、2021年3月に再び節税保険に国税庁のメスが入り、「ホワイトデーショック」と称される発表が行なわれました。
今回はこの再び激震が走った節税保険の見直しについて見ていきます。
■保険の「名義変更プラン」節税のスキーム
2021年3月に国税庁は各保険会社に対して経営者向けの定期保険について、法人から個人に名義変更したときの保険評価額の見直す検討に入ったと伝えました。
法人契約の定期保険の中には、保険契約時から一定の期間は解約返戻金が低く抑えられ、その後に急激に解約返戻金の設定額を引き上げる「低解約返戻金型生命保険」があります。いわゆる「名義変更プラン」と呼ばれる保険商品です。
解約返戻金の設定が低い期間中に保険契約者を法人から個人(経営者等)に名義変更をします。この契約変更時には雇用関係に基づく経済的利益の供与として、その名義変更時の安い解約返戻金相当額が経営者個人の「給与所得」となります。
その後、経営者個人が保険契約を引き継ぎ、解約返戻金設定額が急激に引き上げられた際に解約を行い、高い解約返戻金を受け取ることで会社の利益を経営者個人に移転させることができるようになります。
この解約返戻金は「一時所得」として課税されるため、いわゆる1/2課税が適用され、役員賞与などでもらうときよりも個人課税を大幅に節税できることになります。
■保険評価額の見直しと、異例の遡り適用
今回、国税庁が見直しを検討しているのは、上述の名義変更時の安い給与所得課税時の課税関係です。具体的には「名義変更時に解約返戻金が保険積立金として資産計上した金額の70%未満となるような低額の場合には、帳簿上の保険積立金資産計上額で評価する」ことを定めた改正が見込まれています。
これまで一連の保険関連の税制改正では遡り適用となることはほぼなかったため、改正される日までは駆け込み需要の新規保険契約が一気に増えるというのが通例でした。
しかし、今回の見直し「ホワイトデーショック」では、2019年7月8日以降締結した契約につき、今回の改正日後に名義変更を行った場合に適用することを発表しました。つまり異例の遡り適用を示したことになります。
国税庁は2021年6月末の改正を目指すとしていますが、今後、4月以降にパブリックコメントが出されることになるので、引き続き注視していく必要があります。
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