目の前のことに集中するための4つルール-技術としての「集中力」(1)(Vol.330)


中村 亨の【ビジネスEYE】です。

仕事や勉強に集中するためには、やる気やモチベーションを高めることが必要だと思っていませんか?

…それは、間違いかもしれません。
「仕事」「勉強」の質と結果は、いいスタートダッシュを切れるかどうかにかかっています。集中力は「技術」であり、コツを掴めば誰でもすぐに集中できるようになれるようです。

本日のメルマガでは、技術としての「集中力」を考えてみます。

一流アスリートが実践する「本番前のルーティン」

2000年のシドニーオリンピックで話題となった、サメ肌素材の競泳水着を覚えていらっしゃいますか?商品名を「スピード・ファースト・スキン」といい、日本のミズノと英スピード社とで共同開発されたものです。この開発に携わった森 健次郎氏が、本日のメルマガのキーパーソンです。

森氏は、名古屋工業大学大学院で博士前期課程工学科有機材料コース修了した後、ミズノに入社し、水泳・陸上のオリンピックウエア開発を進めました。開発過程で、競泳の北島康介選手を始めとする多くの一流選手を間近で見てきました。そして、集中力・潜在能力発揮のコツを知りました。

極限の緊張状態となる本番前、アスリートはリラックスするためにルーティンを実践します。北島選手の場合は、両肩を上げてからストンと下げて深呼吸。帽子を目深にかぶり、ヘッドフォンを着けて自分の世界へ。メジャーリーグで活躍する野球のイチロー選手の場合は、バッターボックスに入る際、ユニフォームの袖を引っ張りながら、バットの先端をバックスクリーン方向へ。

一流のアスリートであるほど、ルーティンを行うことでリラックスし、集中力を高めるのです。呼吸や姿勢を意識することで、「心」をパフォーマンスに適した状態へと導いています。

森氏はミズノを退社後、「誰でも深い集中状態をつくり出すことができるはず」との考えに至り、企業や団体向けに集中力をテーマにしたセミナーや研修を開催しました。一流アスリートが日常や試合の本番で実践している呼吸や姿勢の重要性を広め、脳トレや・視覚を利用した集中力アップの方法を広めているのです

目の前のことに集中するための4つルール

第1のルール やらないことを決める

脳は、大事・小事の隔てなく、同じようにエネルギーを使います。エネルギーを無駄に消費させないためにも、今、重要ではないことは行わないと決心しましょう。

「メールチェックを1時間は行わない」「机の上には必要書類以外、何も置かない」といった簡単なことから始め、目の前の事に集中できる環境をつくることも大事です。脳を上手に活用するためには、エネルギーを今やるべきことへ集中させることが重要です。

第2のルール 小さなステップに落とし込む

第1のルールを実践することで、今やるべきことが明確になり、それに適した環境も整いました。しかし、どこから手を付ければよいか、どのようなアプローチが有効か、考えてを巡らせてばかりで行動に結びつかず、無駄な時間を過ごしてしまうこともあります。

例えば「セミナーの準備をする」という仕事を任されたとしましょう。最初は、漠然と頭の中に様々な準備の過程が浮かび上がると思います。このときに、頭の中の「やるべきこと」を全て書き出すと効果的です。可視化することで、優先順位や時間軸が明確になるため、計画の立案が容易になります。

次に、書き出した項目を要素ごとにまとめてみましょう。すると、下記のようなステップに分けることができるでしょう。

(1) セミナー骨子の決定(ターゲット・予算・日程・会場)
(2) 集客のための告知(広告・DM制作・メール配信・SNS)
(3) 事務局運営(問い合わせ・申込み管理)
(4) 当日の社内準備(受付・司会・会場準備・配布資料)
(5) 集計業務(出席者データ・アンケート)

第3のルール 目の前の仕事を一つ一つ片づける

第2のルールで(1)~(5)のようなステップに落とし込むことができれば、あとは、1つ1つに集中して片づけていくのみです。これが第3のルールです。

2つのことを同時進行するよりも、1つに集中するほうがその作業は早く、そしてうまく成し遂げられます。脳は1度に1つの作業しか処理できないため、マルチタスクで作業を並行して行うと、脳は疲弊し集中力が下がります。集中力を低下させるものを机上から排除し、パソコンでもブラウザタブを1つしか開かないなど、常にシングルタスクで目の前のことに集中する状況をつくりだしましょう。

第4のルール あと少しで達成できる目標の設置

第3のルールまで実践できれば、かなり集中できる状態にあると思われます。最後の第4のルールは、目標の設置についてです。

簡単すぎる目標の場合、人間はリラックスし過ぎて、逆に集中できないそうです。そのため、「あと少し頑張ることで達成できる目標」を設定することが効果的です。半分くらいは過去に経験のある仕事であり、残りの半分は未経験の目標を設定すると、ストレスが適度であり、集中しやすくなります。(『週刊ダイヤモンド』(2017年1月14日号)/ 仕事・勉強に効く「集中力」を参考)

「今、目の前のこと」に取り組む習慣が大切

ここ十数年のIT技術の進展やイノベーションにより、モバイル端末が普及しました。現代人は、インターネットを経由して、あらゆる情報にアクセスが可能となり、自らが選択できる自由を手に入れました。しかしそれに比例して、情報の取捨選択や分類が必要となり、処理しなければならないことが増えているようです。

そうした慌ただしい現代だからこそ、集中力をもって、「今、目の前のこと」に1つ1つ取り組む習慣が、より大切になるのでしょう。

ご紹介した4つのルールは、いずれも目の前のことに集中するための準備についてです。次回のビジネスEYEでは、集中力を引き出す6つのワークについてお伝えします。

 

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