2017.06.01

ビジネスEYE Vol.326


中村 亨の【ビジネスEYE】です。

ICT(情報通信技術)の利活用により、場所や時間といった制約を受けない、新たなワークスタイルに注目が集まっています。
総務省が推奨する「働き方改革」のなかで、有効な手段の一つとして挙げられる「テレワーク」。
新型インフルエンザなどの感染リスク回避、首都直下型地震等の緊急事態時の事業継続を目的に導入した企業もあるようです。

本日のメルマガでは、「テレワーク」の現状と今後を考えてみます。

◆テレワーク制度が「ある」企業は約1割
連合総研(公益財団法人 連合総合生活開発研究所)が実施した「勤労者の仕事と暮らしに関するアンケート調査」によると、
自宅などオフィス以外で働く「テレワーク」の制度が、勤務先に「ある」と回答した従業員は全体の9.7%だったそうです。
また、「現在テレワークで働いている」という人の割合が約1%という結果も出ており、テレワーク制度自体が広く認識されていない現状も読み取れます。

◆テレワークの始まり
「テレワーク」という概念が一般的になったのは、米国の評論家で未来学者であるアルヴィン・トフラー氏が、
1980年に発表した著書『第三の波』においてです。
その中で、トフラー氏はこれから情報革命による脱産業社会(情報化社会)が押し寄せ、
「情報通信技術を活用し、自宅にいながら仕事を行う生活が現実のものになる」との説を唱えています。
まさに、在宅勤務型のテレワークに近い考え方を打ち出したものと言えます。

日本では、1980 年代半ばに、米国で普及し始めた新しい勤務形態を参考として、テレワークを取り入れる企業が散見されました。
バブル経済期の労働市場は「売り手市場」であり、テレワークは働きやすい企業であることをアピールするための方策として多く導入されました。
しかし、バブル崩壊後は急速に縮小の一途を辿っています。

◆厚生労働省が「テレワーク・デイ」を実施予定
厚生労働省では各省庁等と連携し、テレワークを活用した働き方改革の運動を展開する一環として、
2017年は東京オリンピック・パラリンピックの開会日となる7月24日を「テレワーク・デイ」と位置付け、多くの企業や団体に一斉実施を呼び掛けています。
具体的には、7月24日、朝の通勤電車等を極力利用せず、少なくとも始業~10時30分まで、テレワークの一斉実施またはトライアルをするというものです。テレワークを活用した「働き方改革」の運動の一翼と位置付けられます。

2012年に開催されたロンドンオリンピック・パラリンピック競技大会では、交通混雑によりロンドン市内での通勤に支障が生じるとの予測から、
市交通局がテレワーク等の活用を呼び掛けたのに対し、企業や市民が賛同する形で、多くの企業がテレワークを導入しました。
結果として、会期中の交通混雑を回避できたことに加え、テレワークを導入した企業では、事業継続体制の確立、生産性や従業員満足の向上、
ワーク・ライフ・バランスの改善等の成果が得られたと報告されています。

◆今後も導入推進は活発に
政府は「週1日以上終日在宅で就業する 雇用型在宅型テレワーカー数を全労働者数の10%以上」、
「テレワーク導入企業数を3倍(12年度比)」とする目標を掲げています。

以前はセキュリティやコミュニケーションの問題、労務管理、コスト面等の問題から導入に躊躇する企業も多くありました。
しかし最近は、これら懸念事項を解消するツールが様々な団体・企業によって用意されており、以前より導入が比較的容易になりつつあると言われています。
今後、総務省ではICT(情報通信技術)環境の技術的課題の検証や、厚労省でも人事評価など労務管理上の課題の検証が行われ、
普及への環境整備が始まります。
今後は中小企業でも導入が期待されていくことでしょう。

テレワーク導入の主な目的は、以下のように分類されます。
(1)ダイバーシティ
育児中の女性社員・介護中の社員などを対象としたテレワークの導入は、働く場所と時間の制約が少なくなり大変効果的です。
(2)ワーク・ライフ・バランス
通勤負荷の軽減や長時間勤務の是正などといった観点からの導入は、仕事と私生活の調和を図ることができ、仕事への好影響も期待できます。
(3)経営目的重視
会社にいる時間ではなく、業務のアウトプットで評価する組織への転換が進んだ企業は、生産性の向上等の経営目的を重視する観点からの導入が
図られると思われます。顧客訪問回数や顧客滞在時間の増加や機敏な顧客対応の実現が可能となります。
(4) BCP(事業継続計画) 観点
自然災害、新型インフルエンザ感染拡大などのパンデミック時にも業務の継続と迅速な対応の仕組みとして寄与します。

以前までは(1)「ダイバーシティ」を目的としていることが多かったですが、近年は(2)「ワーク・ライフ・バランス」が多くなっているようです。
さらに、米国のように労働者の職務が明確になることで(3)「経営目的重視」の導入も多くなるでしょう。
場所と時間にとらわれない柔軟な働き方が普及し、仕事がアウトプットで評価されると、企業と従業員の関係も変化すると考えられます。
少子高齢化など社会構造が大きく変化している現在、人材確保や社員の雇用の観点からも働き方のルールの見直しについては、
常にアンテナを張る必要があるでしょう。

厚生労働省では、中小企業事業主に対し「職場意識改善助成金(テレワークコース)」の申請を開始しています。
これは実施に要した費用の一部が助成されるものとなります。
制度導入のご検討は、日本クレアス社会保険労務士法人にご相談ください。

◇詳細はこちら
https://secure-link.jp/lc/feddizoornozug/

中村亨のビジネスEYE メールマガジン
日本クレアス税理士法人|コーポレート・アドバイザーズでは、会計の専門家の視点から、経営者の次の智慧となるような『ヒント』をご提供しています。