働き方の大原則を定める「就業規則」( Vol.321)


政府主導の「働き方改革」により、「働き方」が大変注目されています。

民間企業各社も様々な制度が検討・導入されているようです。味の素では「所定労働時間の短縮」、ヤフージャパンでは「希望者への週休3日制の導入」などが話題となっています。

こうした「働き方」を見直す際、必ず改訂しなければならないのが「就業規則」です。
「そもそも当社の従業員も、就業規則を読んでいない……」
「就業規則、就業規則と言うけど、そんなに大事なもの?」
現場からはこうした声を多く耳にします。しかし、就業規則は「働き方」の大原則を定めるものであり、雇用主・従業員双方にとって非常に大切なものとなります。

本日のメルマガでは、「就業規則」について考えてみます。

就業規則が大切な理由とは…

従業員が安心して働ける職場にするためには、あらかじめ就業規則で労働条件や待遇の基準を定め、トラブルが生じないようにすることが大切です。
具体的に、就業規則にはどんな目的があるのでしょうか。

1.従業員のモチベーションを向上させる

社内ルールを確立させることで従業員に安心感を与え、モチベーションを高めます。

2.従業員との紛争を予防する

近年増えている個別労働関係紛争(労働組合ではなく従業員個人と企業との紛争)。就業規則を整備することで、ルールを確立しトラブルや紛争を未然に防ぐことができます。

3.万一の場合のマニュアルとして

「従業員が入院して長期休養になった」
「うつ病で休職中の従業員から復職したいと申し出があった」
就業規則に予めこうしたケースについて規定されていれば、規定に沿い従業員と面談等を行いスムーズな対応ができます。

4.問題のある従業員に対する処分の根拠として

「上司の指示に従わない」「反抗的な態度をとる」「協調性が無くトラブルばかり起こす」
もし規定がなければ、減給や出勤停止といった懲戒処分を科すことは難しいでしょう。就業規則に懲戒処分規定があれば、会社側はそれを根拠として措置がとれます。

5.助成金申請には欠かせない

助成金とは、雇用支援や子育て支援など従業員満足度の高い職場を作るために申請をして国からもらうお金のことです。
助成金の例は下記のようになります。

雇用に関する助成金の3例

「職場意識改善助成金(勤務間インターバル導入コース)」

終業から次の始業までの休息時間を確保することを定める取り組みを推進するもの。2017年2月15日より申請受付が開始されました。中小企業事業主が対象です。

「両立支援等助成金」(5種類)

従業員の職業生活と家庭生活の両立を支援するための取り組み等。

「キャリアアップ助成金」(8種類)

正社員への転換を進めるための取組や、人材育成の取り組み等。

助成金の受給にあたっての注意点ですが、就業規則において“関連する規定を設けること”が条件となるケースがあります。そのため助成金申請を考える際には、就業規則の整備が欠かせないと言えます。

就業規則が力を発揮する具体的な場面

就業規則は、人事・労務面でのトラブルが生じた際の法的な「防御壁」になるほか、従業員の成長を促す側面もあります。ここで具体例を見てみましょう。

【2つの具体例】

●ネット上に会社の誹謗中傷を書き込んだ社員を懲戒処分としたら、「不当処分だ!」と反論された。
→就業規則にある懲戒事由に該当していたため、適正に懲戒処分を科すことができた。

●有期契約社員を正社員へ登用後、勤務地限定社員・職種限定社員への転換を検討している。
→対象従業員に適用される就業規則を整備しておくことで、従業員にとってもキャリア形成やワーク・ライフ・バランスの実現が容易になります。

書籍やインターネット上のテンプレートを就業規則として用いている企業も残念ながら存在しているようです。しかし、法改正に対応していない内容も多くリスクが伴います。

また、社内の人材育成はもちろん、採用面においても、就業規則の整備は会社の武器となり得ます。例えば、採用説明会で「就業規則を毎年見直している」と採用候補者に伝えることで、働きやすい会社・職場であるといった好印象をアピールすることができますので、優秀な人材の確保・獲得につながるでしょう。

就業規則はアップデートが必要

就業規則に関連する労働関連法は毎年のように見直されていますが、以前の内容のまま、大切に保管してあるということはないでしょうか。就業規則のアップデートが必須となります。

「フレックス制」「ノー残業デー」「在宅勤務」「定時消灯」「裁量労働制」…。企業は、様々な制度を導入しながら「働き方」を改善すべくアプローチしています。

レディースファッションブランド「アースミュージック&エコロジー」を展開するストライプインターナショナルでは、就業面で何かと制約を受けることが多い女性のために、短時間勤務を前提とした「4時間正社員」「6時間正社員」の採用を行ってるそうです。

この施策は、女性のワーク・ライフ・バランスへの貢献を目指す人事政策が評価され、2016年に「女性の活躍推進に関する優良事業者」として第一号の認定を受けました。さらに経済産業省の「健康経営優良法人 2017」認定法人にも認定されています。働き方の見直しは、従業員の健康管理はもちろん人事採用戦略の観点からも、経営戦略と密接した重要な事項です。

「就業規則」は経営戦略を具現化するための重要な存在なのです。

 

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