中村 亨の【ビジネスEYE】です。
「たかが箇条書きこそ、世界最強のスキルである。」
相手に伝わり難く長い文章、要領を得ないプレゼンテーション…。直感的に理解し難い「情報」は、思わぬ誤解を生み、仕事を停滞させる要因になります。
本日のメルマガでは、『超・箇条書き』(ダイヤモンド社 / 杉野 幹人 著) を基に、「箇条書きの技術」について考えてみます。
『超・箇条書き』とは?
戦略コンサル、シリコンバレーの起業家、MBAホルダーなど、世界の最前線で活躍するエリートは、「Bullet Points(ビュレットポイント)」
と呼ばれる「箇条書き」によるコミュニケーションを多用しています。著者である杉野氏は、シリコンバレーでこの「Bullet Points」の基礎を学び、その後、世界最高峰のビジネススクール「INSEAD」でMBAを取得しています。
箇条書きは、単に「いくつかの項目をひとつひとつ分けて書き並べる」ことを指しますが、超・箇条書きはそこに、「構造化」・「物語化」・「メッセージ化」の三要素を加えます。この手法を使うことで、より速く、魅力的に内容を伝えることができるそうです。
全体像を瞬時に伝える
相手に理解を求める際、重要なのは「全体像」を共有することです。全体像が共有できていれば、短い言葉で物事を伝えることが可能になります。この全体像をつくるためには、いくつかの要素が必要になります。まず第一の要素が「構造化」です。情報の要素ごとに整理された文章は、ポイントが明確となるため、直観的にも理解しやすくなります。
総務チームでの会議内容を上司に報告している事例について考えてみましょう。
【事 例】
1)新入社員が作成した箇条書き
・総務部の人員が足りていない
・ケースバイケースの事案が多く時間がかかる
・請求書の作成が間に合わない
・総務部で期間限定のスタッフが増える
・それ以外のことは、人事部が経営会議に報告して指示を仰ぐ
2)「構造化」した箇条書き
◇3つの問題点が議論された
・総務部の人員が足りていない
・ケースバイケースの事案が多く時間がかかる
・請求書の作成が間に合わない
◇2つの対応が決まった
・人事部が総務部に期間限定でスタッフを貸し出す
・それ以外のことは、総務部が経営会議に報告して指示を仰ぐ
1)よりも2)の方が、格段に理解しやすいではないでしょうか。2)は、内容が整理されただけでなく、時間軸も分かるので直感的に理解できるのです。
構造化のための最初のステップ ~レベル感を整える~
「レベル感を整える」とは、「伝えたいこと」と「伝えたいことの詳細・補足」に情報を分け、つながりを持たせて並べるというものです。先程の例の1)では、5つの箇条書きが単に羅列されているだけでしたが、それを「状態・現象」を伝えるものと、「行為」を伝えるものに分けます。前段で「会議で議論された問題点」をまとめ、後段で「今後の対応」を表しています。箇条書きを2つに分類するだけでも、読み手の理解が高められます。
レベル感を整えるコツ ~「自動詞」と「他動詞」を使い分ける~
さらに、「状態・現象」を伝える文章は「自動詞」を使うと適切であり、一方「行為」を伝える文章には「他動詞」が適切であると杉野氏は説きます。
【自動詞と他動詞の違い】
自動詞:ドアが開く
他動詞:私がドアを開ける
自動詞を使った場合、動作が主語以外のヒト・モノに影響を及ぼさず、自己完結する用法であることから、主語を省いても表現できる文章となります。他動詞を使った文章の場合、ドアを開けたのは「私」であるという因果関係が明示されます。そのため「行為」を表す文章を書く際は、「他動詞」を使うことで責任の所在が明確になり、行動につながりやすくなるのです。こうした自動詞と他動詞の使い分けも、レベル感を整えるコツとなります。
レベル感を整えるコツ ~「ガバニング」を使う~
「Governing(ガバニング)」を直訳すると、「支配する」「統制する」といった意味があります。伝えたいポイントが3つあるときには、まず最初に「今日の話のポイントは3つあります」と伝えてから、各論に入ると、話が頭に入りやすくなります。この手法は、箇条書きだけでなく、スピーチなどあらゆるコミュニケーションに於いて使われています。
タイトルや見出しにガバニングを取り入れることで、曖昧さがさらに排除され、瞬時に理解できるようになります。こうして単なる箇条書きが、論理的に組み立てられた『超・箇条書き』へと磨かれ、良質なものになるのです。相手に素早く理解してもらうために「短く、魅力的に伝える」ことが最強のメソッドだとする『超・箇条書き』。メールやプレゼンテーションはもちろん、考えの整理をする際にも「箇条書きメソッド」は効果を発揮するでしょう。
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