2017.03.17

ビジネスEYE Vol.316


中村 亨の【ビジネスEYE】です。

1996年にサービス提供を開始したヤフージャパン(以下、ヤフー)は、昨年20周年を迎え、2016年10月に東京本社を移転しました。
移転を機に、ヤフーが変えたいのは「働き方」です。
新オフィスには、従業員の働き方を変える仕組みや工夫が随所にちりばめられています。
そのような中、代表取締役 宮坂学氏は「週休3日制」について言及し、多くの反響を呼んでいます。

今回のメルマガでは、ヤフーの「週休3日制」について考えます。

■ヤフーが新オフィスで重視したこと
ヤフーの転居先は、東京ガーデンテラス紀尾井町(東京都千代田区)です。
新オフィスは3つのコンセプトに分かれているそうです。
そのうちの「ハックブル」と呼ばれるエリアでは、自由にレイアウト変更ができるといった特徴があります。
また、一部を除き、執務エリアはフリーアドレスを採用しているため、毎日違う席で仕事ができます。(ヤフーホームページより)

同じIT業界のグーグルのオフィスも、先進的かつ洗練されたデザインであることから、多くのメディアが取り上げています。
ヤフーも働く環境を変化させることで、社員同士の交流が図られ、生産性の向上を期待しています。
さらに今回、オフィス以外のどんな場所でも勤務を行うことができる「どこでもオフィス」の拡大等も併せ、積極的な働き方改革を推進しています。

■「週休3日制」の根底にある宮坂氏の体験とは
ヤフーの従業員数は約5,800人。大所帯をまとめる代表の宮坂氏の「週休3日制」発言の狙いはどのようなものなのでしょうか。(文芸春秋2017年1月号)

宮坂氏は1997年に創業2年目のヤフーに入社します。
私生活は皆無で仕事に没頭することとなりますが、成果があがるのが面白く、会社に泊まり込んで仕事をすることも多かったそうです。
その後、ジャスダックへ上場。ヤフーはインターネット界のプラットフォームとして業績を伸ばし続けていきます。

ところが、30代前半になると、宮坂氏の体調に異変がおきます。腰痛が悪化し、仕事に支障をきたすようになってしまったのです。
そこで、体調管理のためにランニングをはじめたことを契機に食生活や睡眠など生活リズムを整え健康的な生活を心がけたそうです。
そこで宮坂氏が気づいたこととは、長時間労働では新しいイノベーションにつながる成果を生み出さないということでした。

また、障害者雇用の専門家と交流した際、思いがけない指摘があったそうです。
「色覚障害の方にとってヤフーが使いにくい」と言われたのです。ヤフーが標榜してきたユニバーサルデザインの改善点を発見でき、社外の方との交流の大切さに気づいたそうです。
様々な体験を通して「長時間ではないハードワーク」こそが、求められる働き方であると確信したそうです。

■労働生産性の向上のためには
宮坂氏の狙いは、ワークライフバランスの実現とともに、短い労働時間で仕事の成果をあげる生産性の向上が欠かせない視点となります。
「週休3日制」にこだわるのではなく「選択肢を増やす」という従業員側への配慮があるようです。

公益財団法人 日本生産性本部によると、2015年の日本の労働生産性は、OECD加盟35カ国の中でみると22位であり、米国と比較すると概ね6割程度の水準だそうです。
日本が米国をはじめとする主要国との生産性格差を縮めるには、業務の効率化を進めるだけでなく、新しいサービスや製品を生み出して付加価値を獲得することが重要と指摘されています。

■競争力をつけるための「働き方改革」
政府は、働き方改革実現会議を設置し検討を続けていますが、そうした動きに先んじて、食品企業グループである味の素は、労使が合意に至り、
2018年度から所定労働時間を1日7時間にすると発表がありました。正社員の1日の所定労働時間を7時間にする目標を2年前倒しで実施するそうです。

労働時間の削減とともに味の素が進めているのが、従業員の働く時間についての「意識を高める」方策です。
有休の取得状況や残業についても公開する制度を用いて、短時間に効率よく業務を遂行できるように問題意識を高める狙いがあるそうです。
味の素において、仕事の「時間」を削減し、なおかつ「質」を高めるよう、複数の改革が同時に開始されています。

ヤフーが見据える先には、時価総額世界ランキングの上位のグーグルやフェイスブックなど名だたる企業ばかりです。
足元の数字が順調に推移していたとしても、常に5年後10年後のビジョンを示し、競合相手に挑みつづけなければなりません。
同社のホームページには、宮坂氏の決意が掲載されています。

インターネットの力で日本を希望あふれる社会に変えていくためには、まずはYahoo JPAN自身が進化し続けていきたいと思います。
20年先も、100年先もみなさまに必要としていただけるインターネット企業であり続けるために、挑戦していきます。

常に挑戦し新しいサービスや製品を生み出すには、小さな改善はもちろん時には大胆なビジネスのプロセス自体の見直しやパラダイムシフトした視点などが重要となるのでしょう。大きな改革には、日々の業務だけでは着眼できないという危機感が宮坂氏にはあるのかもしれません。

ヤフーの「週休3日制」を含めた働き方革命。
従業員のワークライフバランスを実現し、また同時に労働生産性を高めるための改革を行う宮坂氏の手腕に注目が集まります。

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