2017.03.10

ビジネスEYE Vol.315


中村 亨の【ビジネスEYE】です。

 

世界シェアトップのタイヤメーカーであるブリヂストン。

現在150ヵ国以上で事業を展開する日本を代表するグローバル企業です。

 

創業者の石橋正二郎氏は、社名について、姓を訳した「ブリッジ」(橋)と「ストーン」(石)から、「ブリヂストン」としたという話は有名です。
直訳すると「ストーンブリッジ」ですが、それですと言い回しが悪いことから逆さにしたそうです。
また、当時、タイヤの世界的ブランドだった米ファイアストンのような一流企業になりたいという思いも込めて命名したそうです。

ブリヂストンは、目標としていた米ファイアストンを1988年に買収することになります。それ以降、幾多の困難を乗り越え、強いグローバル企業へと成長しました。

今回のメルマガでは、困難に学び続ける「非カリスマ経営」をキーワードに紐解きます。

 

 

■非カリスマ経営

ブリヂストンは、2011年当時の荒川詔四社長の指示により、現在の「2トップ体制」に移行しました。
それは、津谷正明CEOと、西海和久COOの2人が経営を担うというものです。
2トップ体制は、米州タイヤ事業本社が2010年に導入していた体制で、それが機能していたため、グローバル本社でも導入したという背景があります。
2人の間には、以下のような『4つの約束事』がありました。(週刊ダイヤモンド 2016年12月24日号)

 

1、お互いの意見が分かれても、他の人がいる前では議論をしない

1、会議には一緒に向かう

1、秘密を持たない

1、2人して同時に社員を叱らない

対照的なバックボーンを持つ2人は、経営の方向性など議論を重ねるなかで、上記のようなルールを作りました。津谷氏は国際渉外に携わり、経営トップに仕えてきた社歴に対し、西海氏は生産現場を歩んできた実務の人です。

『4つの約束事』からみえてくるのは、意外なほどに日本的であり繊細なものだといえるでしょう。

 

■ファイアストン(FS)買収

ブリヂストンは、1983年にFS社の米ナッシュビル工場を取得し、次のステップとしてFS社との合弁事業について模索していました。そのような時に、イタリアのピレリ社が敵対的買収を表明したのです。
不測の事態に、ピレリ社が提示した額の1.4倍(1株80ドル)を提示して、買収を早めることになったのです。

ブリヂストンはこの買収を「第二の創業」と捉え、新しい文化をつくりあげるという自負と目標を持ち臨みました。しかし、その後はあらゆる困難に直面します。
買収決定直後には、米自動車大手ゼネラル・モーターズがFS社との取引打ち切りを発表。それに加え、小売店は赤字に陥っている店舗も多く、工場は生産性が低いなど、問題は山積していました。日本からの追加支援を頼りに再建を目指しました。

 

■苦難の連続

1993年には米州事業トップに日本人を据え、ようやく単年度で黒字化するも、翌年には大規模なストライキが起きてしまいます。その後も、横転事故に端を発したFS製タイヤのリコール問題、フォード社への供給打ち切りなど、困難に見舞われます。

こうした買収後の辛酸をなめるような事態を教訓とし、いつかはブリヂストン流の新しいグローバル経営を追求したいと考えていたのが津谷氏でした。津谷氏は、1988年にFS社を買収するときに、事務局として経営陣に同行し、議論の行方を見守っていた一人だったからです。
津谷氏がCEOに就任しリベンジが始まったと、時をほぼ同じくして、ようやく2010年前後から米州事業が利益に貢献するようになりました。

 

■新のグローバル経営へ

現在の津谷氏と西海氏の2トップ体制となってからは、地域トップの異動を頻繁に行いグループの最適化を行っています。異動を行うことで、個々の事業のレベルを引き上げる目的があるからです。
さらに、海外の事業本社のトップとは、2週間に1度の頻度で話をし、社員とも「タウンホールミーティング」という機会を設けコミュニケーションを取るそうです。

米州事業の立て直しにあたっては、日本から資金や人材を投入しても米州事業が利益に貢献するまでには、多くの時間が必要でした。そうした苦い経験から、ブリヂストン流の新しいグローバル経営の礎を築いているのです。

典型的な日本型経営の特徴としては、組織として継続性と安定感に強みがあり、生え抜き社長が主流でもあります。反対に、カリスマ経営者として思い浮かぶのは、ユニクロ(ファーストリテイリング)、ソフトバンク、日本電産、スズキ(自動車)等がその代表格ではないでしょうか。
世界を舞台に活躍している企業は、カリスマ経営者がトップであることが多いように感じます。

「非カリスマ経営」(2トップ体制)で世界のトップシェアを保ち、さらに世界で戦い続けるブリヂストン。米州事業の立て直しという苦難の経験を武器に、どこまで優れた成長モデルを確立していくでしょうか。ソフトバンク、サントリー、日本たばこ、東京海上、第一生命など海外の企業を買収した日本企業は昨今、大変多くなりました。そうしたグローバル化を進める企業のパイオニアとして、困難に学び続けるブリジストンの「非カリスマ経営」は、多いに注目を集めるのではないでしょうか。

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