2017.03.01

ビジネスEYE Vol.314


中村 亨の【ビジネスEYE】です。
米キャリア情報サイト「グラスドア」が毎年12月に発表する『最も働きたい企業ランキング』。

「全般的な満足度」、「経営トップのリーダーシップ」、「キャリアチャンス」、「報酬」、「ワークライフバランス」など、多岐に渡る質問項目からなるアンケートを通じ、企業で働く従業員の生の声を反映させた大変興味深いランキングです。

前回取り上げた「グーグル」は、常にトップ10位内にランクインしており、2015年には1位になりました。

今回のメルマガでは、前回に引き続き、グーグルの強さの秘密に迫ります。

 

■ 報酬は不公平でいい

先週のビジネスEYE(Vol.313)で、グーグルで人事部門のトップを務めたラズロ・ボック氏の著書『ワーク・ルールズ!』をご紹介しました。その第10章にはこうあります。「Pay Unfairly(報酬は不公平でいい)」。この不公平とは、一体どのようなことなのでしょうか?

グーグルは、過去の経験則から「Pay Unfairly」との考えに至りました。
同じ業務を担当する2人の社員が会社にもたらす影響に100倍の差が出た場合を考えてみましょう。

日本人の感覚では「不公平=悪」となりますから、護送船団方式で2人の従業員にほぼ同額の報酬を支払うのが通例でしょう。ただ、グーグルは違います。報酬にも100倍の差をつけるべきとの考え方なのです。グーグルのいう「不公平」とは、一般的に蔓延する悪い意味での「公平」を指します。
報酬がすべてではありませんが、この問題は人材(人財)放出の一因となるのは間違いないでしょう。

「優秀な人材には高額の報酬を与える価値がある」との信念を感じます。

 

■ 手厚いグーグルの福利厚生

よく報じられていますが、グーグルの福利厚生は至れり尽くせりです。無償で提供される食事は超一流で、メニューも幅広く取り揃えられています。また、従業員が働くオフィス環境は、遊び心溢れた施設を備えるなど、モチベーションを上げる工夫がなされているようです。

第11章「The Best Things in Life Are Free (or Almost Free)  (なぜグーグルの食堂はタダなのか。福利厚生費が意外に多くない秘密)」

 

アメリカのグーグル社内で提供されているサービスの例【週刊東洋経済(2015年6月13日号)】

・ATM
・自転車の修理
・洗車とオイル交換
・ドライクリーニング
・産地直送の有機食品と肉類の配達
・移動美容院とサロン
・移動図書館 etc…

これ程までに充実した福利厚生は、高収益企業だからこそ提供可能なのだと思われがちですが、意外にもコストは抑えられているようです。これは、グーグルが業者に支払をするわけではなく、サービスを提供したい企業家が申請して実施し、料金は利用した社員が払うという仕組みがあるからだそうです。会社側はスペース等を提供しているに過ぎません。ある種のプラットフォームともいえますね。なかには、社員が自ら運営しているサービスもあるといいます。
福利厚生に注力する理由は明確です。最適な職場環境を提供することで、世界を驚かせるようなクリエイティブかつイノベーションな新サービスを開発、これに尽きるでしょう。

 

■ 20%ルールがイノベーションの源泉

福利厚生とは別に、サービス開発として驚くべき効力を発揮しているのが「20%ルール」です。

程度の差はありますが、以前に『3M』が「15%カルチャー」という名で実践していたものに似ています。この15%カルチャーとは、「執務時間の15%を自分の好きな研究に使ってもよい」とする不文律のことで、これが3Mを代表する「ポスト・イット」(付箋)の開発につながったという逸話もあります。

 

グーグルの場合、Gmailの元となったカリブーやグーグルマップ、グーグルニュースといったものが企画・開発され、世に送り出されました。この「20%ルール」には、新しいものを生み出す素地を従業員から引き出す効果があるようです。

 

弊社主催の『M&Aサミット2016』(2016年7月7日開催)でご講演いただいた元グーグル日本法人 代表取締役社長 辻野 晃一郎氏は、次のように述べていました。

「グーグルには、多彩な社員が在籍していて、自らのアジェンダに基づきフルスイングで働いていた。
ITの会社ですので、コミュニケーションが少ないと思われがちですが、全く逆で、対話が重視され、それをイノベーションに繋げていた」。

サービスだけに留まらず、その存在自体がクリエイティブかつイノベーションであるグーグル。
知れば知るほど、『人』を理解(分析)し、想う企業であることがうかがい知れます。
もしかすると、グーグルの姿が未来のグローバルスタンダードになるのかもしれませんね。

中村亨のビジネスEYE メールマガジン
日本クレアス税理士法人|コーポレート・アドバイザーズでは、会計の専門家の視点から、経営者の次の智慧となるような『ヒント』をご提供しています。