中村 亨の【ビジネスEYE】です。
前任の伊東社長に始まる「グローバル6極体制」戦略。世界を6つの地域に分け、各地域が自立した組織として事業運営を行うとする戦略ですが、八郷社長の代でついに成果が伴ってきたようです。
本日のメルマガでは、ホンダの戦略について考えてみます。『世界6極体制を進化させる / ホンダ』 (週刊エコノミスト/2017年1月31日号)
ホンダの世界戦略
前任の伊東社長が示した「世界6極体制」の肝は、『地域専用車』でした。地域別の嗜好(流行り廃り)を分析し、需要に合った適切な商品を展開していく。顧客ニーズを最大限くみ取る一方で、コストカットにも一役買おうというものです。
最近の流行りは、中国がSUV、日本が軽自動車、北米がライトトラックのようです。このラインナップ、妙に納得感があります。やはり流行りにはお国柄が透けてきますね。
特筆すべきは、2016年9月の中国での新車販売台数です。なんと前年同月比46.5%増(12万929台)。減税措置の効果・影響が追い風になっているのは事実ですが、販売台数が7カ月連続で2ケタ増加となっているため、顧客ニーズと商品展開が合致しているといって過言ではないでしょう。
さて、「地域専用車」で業績が回復つつあるホンダですが、新たな課題も生まれています。
①「組織としての課題」
各地域のニーズに合わせた商品展開に追われることになり、開発工数の負担増大。
②「資材コストの課題」
地域専用車の強化=部品数の増加となるため、資材コストの上昇がとまらない。
③「設備の課題」
グローバルの生産能力が555万台であるのに対し、販売は498万台。約60万台の生産能力をロスしている。
八郷社長の戦略見直し
これらの課題を解決すべく、八郷社長は「世界6極体制」の抜本的見直しを行いました。キーワードは「効率化」。
①「地域専用車の対局するグローバル車へのテコ入れ」
グローバル車を再度強化することで、地域専用車との2軸体制へ移行させ、現場の負担を緩和させる。
②「効率化」
地域専用車間で共用パーツを増やし、コスト軽減を図る。
③「世界6極体制での連携」
生産能力のロスを解消するため、生産に余剰感のある国から需給のひっ迫した国への輸出を増やす。※このほかにも、他社との連携、協業、そしてM&A(win-winの関係が前提)も検討。
自動車業界は特に影響を受けるであろうトランプ政権の運営や英国のEU離脱。不測の事態に備え、、環境・ニーズの変化を見極め、常に効率向上を図ることが求められるでしょう。そして何よりも『身の丈に合ったスピードと規模観を持つ』ことが企業存続の鍵となります。以前のメルマガにも書きましたが、孫子の言葉をもう一度。
「彼を知り己を知れば百戦殆からず」
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