医薬品業界を例に考える「経営のスリム化」について(Vol.303)


前立腺がん治療薬「イクスタンジ」の売れ行きが好調なアステラス製薬。国内主要製薬会社の売上ランキング(2016年3月期)では、武田薬品、大塚HDに次ぐ第3位、営業利益に限れば堂々の第1位と、業績は好調なようです。その同社が、子会社解散を含む事実上のリストラ策を発表しました。

本日のメルマガでは、「経営のスリム化」について考えます。『アステラス製薬、業績堅調でも早期退職募集』[日本経済新聞 電子版 2016/12/01]

医薬品業界が抱える問題

現在の医薬品業界は、大きく2つの問題を抱えています。

1. 少子高齢化により国内市場の拡大・成長が見込めない。
2. 政府主導による後発医薬品(ジェネリック医薬品)の普及。

アステラス製薬は2007年・2014年にも早期退職者を募集しています。当時の理由としては、上記の1の要素が強いものでしたが、今回は2が主因と考えられます。

好調期に割きを見据えたリストラ実施

膨らむ医療費負担を抑制するために、政府は2018~2020年度までに後発薬のシェアを80%まで高める方針を打ち出していますが、新薬メーカーにとっては、特許切れの新薬の販売(収益)を減らすことになります。それゆえ、営業利益、純利益とも2ケタ成長となっているアステラス製薬でさえ、好調である今のタイミングだからこそ人員削減を進め、『経営のスリム化』を図ろうとしているのです。急場しのぎのリストラではなく、あくまでも将来を見据えた戦略的なリストラと言えます。

ただ、「経営のスリム化」だけでは、企業としての成長はありません。人員削減の一方で、業務部門の見直しや問題点の洗い出しを行い、より効率的な組織を構築する必要があります。

他業界でも同様の動き

業績が好調なうちの経営をスリム化し、収益基盤を固めようとする動きが他の業界でも散見されています。いずれの企業もこれまでスケールメリットを享受してきた大企業ですが、目まぐるしく変化する外部環境に、現状の巨体では追いつけないと悟ったのでしょうか。

住宅設備業界では、LIXILグループ。同社はこれまで積極的なM&A路線をとっていましたが、新社長の就任とともに、これまでの戦略が変更されました。巨大化し過ぎたグループに機動力を戻すべく、経営幹部の半減や子会社売却も検討しているようです。

家電業界では、鴻海傘下となったシャープ。組織をスリム化し、執行役員の数をこれまでの22人から1人に減らすほか、分社化経営を強化して厳格な収支管理や意思決定のスピードアップを図っています。事業本部を再編し、各本部長の権限強化することで、迅速な意思決定と収益意識の改善が期待されます。

 

変革期において、専業のリスクは回避すべきことです。ただ、闇雲にシナジー効果を狙って多角化を推し進めることは愚行です。事業の多角化と経営のスリム化、この2つはセットとして考えるのが肝要です。成長を止めない、生き残るためには、足し算や掛け算だけでなく、引き算や割り算も必要です。より効率的な組織を構築・維持するためには、変化させることも重要なエッセンスとなります。

 

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