2016.11.17

ビジネスEYE Vol.301


中村 亨の【ビジネスEYE】です。

『ミスド、10~30円値下げ ダスキンが35種類で』 [ 2016/11/7 日本経済新聞 電子版 ]

ダスキンが運営する『ミスタードーナツ(以下、ミスド)』が、今後の事業戦略について発表しました。定番商品の値下げをはじめ、新業態の出店、既存店の改装、健康志向商品の開発などを進めるようです。

新戦略による「値下げ」が奏効し、集客・売上のV字回復となるのでしょうか。

本日のメルマガでは、ミスドにみる「失敗の値下げ」について考えます。

 

◇ ドーナツが売れない時代?

日本のドーナツ市場は、事実上ミスドの寡占状態にあります。そのミスド、実は凋落の一途をたどっているのです。

<ミスド国内チェーン全店売上高 | 店舗数>

2012年3月期:1147億円 / 1,373店

2013年3月期:1112億円 / 1,376店

2014年3月期:1030億円 / 1,350店

2015年3月期:1020億円 / 1,317店

2016年3月期:  915億円 / 1,271店

国内チェーン全店売上高は上記のように回復の兆しが見られません。

また、営業拠点となる店舗数も着実にその数を減らしています。

ただ、ミスドだけが苦しんでいるわけではありません。

 

『クリスピー・クリーム・ドーナツ』

2006年12月に日本へ初上陸した『クリスピー・クリーム・ドーナツ』。

当初は行列のできるドーナツ店としてブームを巻き起こしましたが、10年の節目を迎えた今年3月、売上不振などを背景に64店舗のうち一挙に20店弱の閉店を余儀なくされています。

 

『コンビニ ドーナツ』

2014年頃からコンビニ各社がドーナツ業界へ新規参入。

発売当初は好調だったものの、ブームの沈静化に伴い不振事業へと変貌しつつあります。

 

ドーナツが売れなくなった理由として、「少子高齢化の影響」や「労働者の実質賃金の低下」とする声も聞かれますが、肝心なことを忘れてはいけません。

スイーツを購入するメインの層は『女性』なのです。

 

もしかすると、売れない理由は難しい話ではなく、単に「ドーナツがヘルシーではない」からなのかも知れません。

新規参入組(コンビニ)が販売するドーナツは、いわゆるドーナツであり、それ以上でも以下でもありません。

店舗数などで圧倒的有利なコンビニが不振にあえいでいる理由が透けてきます。

1.そもそもの潜在的な市場規模を見誤まっている

2.ニーズに応じた商品開発・提供ができていない

3.オリジナリティがない

といったところでしょうか。

 

◇ ユニクロ、マクドナルド…値下げのループ

さて、話をミスドの戦略に戻します。

原点回帰を掲げ、定番商品の値下げに踏み切ったことで、これまで、販売戦略の上で重要な役割を果たしてきた「100円セール」を廃止します。セール時には長い行列を見かけたものです。

以前のメルマガでも触れましたが、このセールは「アンカリング効果」を生み出します。

簡便すると、セール時の価格が基準点(アンカー)となってしまい、セール終了後には「割高感」が生じ、購入意欲が削がれてしまう心理傾向のことを指します。

これを回避するには、セールの継続もしくはミスドのようにセールを廃止する代わりに商品の値下げを行うかになります。

 

ミスドは、『割高感の払拭』こそがV字回復のカギになると考え、セールを中止し、定番商品の値下げを断行、ユニクロ同様、EDLP(Every Day Low Price)と呼ばれる価格戦略を実施していきます。

客単価の減少は、客数でカバーする。

値下げに踏み切る企業がよく口にする言葉です。

過去の実績に裏付けられた自信があるからこその言葉でしょう。

 

ただ、なぜその商品がいまの価格帯にあるのかを、今一度よく考えてみてください。

原材料の高騰、人件費のベースアップ等々、様々なコストアップを転嫁した結果が今の価格です。

つまり、自信がある商品だからこそ、値上げしてこれたという証でもあるのです。

 

今回の値下げは、少々安直と言わざるを得ないかも知れません。

ただ、新戦略の一つに『健康志向商品の開発』が含まれていたのがせめてもの救いでしょう。

 

復活したブランドスローガン「いいことあるぞ Mister Donut」。

「低価格=安物」という一般的ば固定概念を打ち壊し、見事客足と業績をV字回復できるのか!?に注目です。

 

以上、中村 亨の【ビジネスEYE】でした。

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