ヤマザキ・ナビスコ、一昔前ではバーバリー(三陽商会)を例に考える「ライセンス契約」(Vol.295)


『山崎パン「ナビスコ」46年で幕 「オレオ」「リッツ」契約解消』(日本経済新聞 電子版 / 2016/2/13)

日本企業とのライセンス契約を解消し、直営化に移行する欧米ブランドが増えています。直近ではリッツやオレオで有名なヤマザキ・ナビスコ、一昔前ではバーバリー(三陽商会)など、業種を問わずこの動きが活発になっています。本日のメルマガでは、「ライセンス契約」について考えます。

貸し手が有利なライセンス契約

ライセンス契約の場合、ライセンサー(権利者/貸す側)の方が一般的に立場が強くなります。貸し手有利のなので、場合によっては突然契約を打ち切られるリスクが伴います。では、借り手にとってのメリットは何でしょうか。双方のメリットを確認しておきます。

【ライセンサー(貸し手)のメリット】

・ 流通・販路の開拓に掛かるコストを大幅に削減できる。
・ 国ごとにマッチングしたブランドの育成、在庫リスクがゼロになる。

【ライセンシー(借り手)のメリット】

・ 高額な商標権を獲得するコストが掛からない。
・ ライセンス料(売上高の10%程度のロイヤルティー)を支払うだけで自社企画の商品を集客力のあるブランド名を冠して販売することができる。※ライセンサーによるチェックは入る

ライセンス契約を解消し直営化する流れに

ここ最近あったライセンス契約解消の実例を挙げてみましょう。

・ヤマザキナビスコ / モンデリーズ(2016年)

■1970年から40年以上続いたライセンス契約の解消。
■リッツなどの3銘柄の製造・販売は、モンデリーズ・ジャパンが継続。
■ヤマザキナビスコは年間150億円程度の売上を失う。

・明治 / ムンディファーマ(2016年)

■1961年から50年以上続いたライセンス契約の解消。
■イソジンの日本国内における独占的な販売提携契約をシオノギヘルスケアと締結。
■明治は年間35億円程度の売上を失う。

・三陽商会 / バーバリー(2015年)

■1970年から40年以上続いたライセンス契約の解消。
■三陽商会が立ち上げたバーバリーの派生ブランド(ブルーレーベル、ブラックレーベル)に関しては、バーバリーを象徴するチェック柄を継続使用を認め、新たにライセンス契約を結んだものの、名称やロゴの使用は不可。バーバリー自体は直営化。
■三陽商会は、2016年12月期の連結最終損益が95億円の赤字に転落(前期25億円の黒字)。

こうしてみると、海外ブランド頼みの成長モデルが浮かび上がってきますね。しかし、このビジネスモデルは既に破たんしているといっても過言ではありません。なぜなら、ブランドを保有する海外企業はすでに経営戦略(ブランド戦略)を180°切り替えているからです。その背景には、日本国内での競争激化が一因として挙げられます。競争を勝ち抜くためには他社との差別化が肝となります。そこで求められるのは『ブランド力』です。

迫られるブランド力の強化

日本進出の際には「流通・販路の確保」を目的としたライセンス契約が主流でしたが、ブランドとして醸成・定着した現在では、更なる『ブランド力の強化』が目的となります。それゆえ、海外企業は直営化を急いでいるのです。本来であれば、ライセンス契約と同時並行で独自ブランドの育成に注力すべきでしたが、いずれの企業も後継ブランドの育成に成功しているとは言い難い状態です。まずは、早急なブランド戦略の転換が必要でしょう。そのうえで、業種の壁を取り払った「事業の多角化」を検討すべきだと思います。

 

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