本業(主力事業)を失うことにもなり兼ねない「事業の組み換え」(Vol.294)


中村 亨の【ビジネスEYE】です。

『現在、世の中にある職業の多くがAI(人工知能)に取って代わる』(英オックスフォード大のマイケル・オズボーン准教授/2013)

2016年4月に経済産業省が発表した『新産業構造ビジョン』によると、以下の2つのシナリオを想定しているようです。
「現状放置シナリオ」 : 単純労働がAIやロボットに置き換わり、735万人の雇用減少。
「変革シナリオ」        : AI技術革新、データ活用による付加価値の高いサービス業や情報サービス

部門などの成長による雇用増加の効果で、雇用減少が161万人に抑えられる。いずれにしても雇用減少は逃れられないようです。企業もまた然り。何の手も打たなければ本業(主力事業)を失うことにもなり兼ねません。本日のメルマガでは、「事業の組み換え」について考えます。

富士フイルムHDにみる事業の組み換え

テクノロジーの進化によって主力事業を失った経験を持つ富士フイルム。同社はデジタル化の波に押され、主力事業であった「写真フィルム事業」を実質的に失いました。

企業存続のためにリストラ策をとって延命を図るも、将来像を描けず。利益が激減しても主力は主力。その考えが、写真フィルム事業からの脱却の重石となっていたのでしょう。しかし、変革が訪れます。『事業の組み換え(新規事業への取り組みや経営の多角化)』へと舵をとったのです。

M&Aで従来事業とシナジーを生み出す

そこからのスピードはさすが「富士フイルム」といった印象を受けます。『資金力』という強みをもとに、将来性がある事業を積極的にM&Aで手に入れていきます。手に入れた事業には、これまで写真フィルム事業で培ってきた技術力や生産管理をどんどん応用して取り込んでいきました。現在では、ライフサイエンス、印刷機器の製造販売を行うゼロックス、高機能材料などの5領域で主力事業を手掛けるまでになりました。

同社の戦略は実にシンプルです。語弊があるかも知れませんが、身の丈に合ったM&Aの実践者であります。自社の保有する技術を活かすため、全くの未知の領域に攻め込むのではなく、あくまで隣の領域に的を絞ってM&Aを仕掛ける。事業の種まきというよりは、事業の接ぎ木のイメージです。今では企業イメージの刷新にも成功し、更なる成長ステージへと歩を進めています。

AI時代を迎えるために

事業の組み換えには、単純なM&Aだけではありません。場合によっては事業の切り離しや結合も検討しなければなりません。「AIが仕事を奪う」と警戒するのではでなく、一つのきっかけとして事業全体を見直してみてはいかがでしょうか。

現状維持を目指せば、いずれ衰退化の道を辿ります。事業への執着を捨て、組み換えることで得られる「高付加価値化」や「新市場の開拓」そして「自主技術のクラスアップ」に目を向けましょう。

彼を知り己を知れば百戦殆からず / 孫子

敵を知り、自分の力量を的確に認識した上で対処すれば、成功への道は開かれるものです。

 

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