欧米諸国のロジカルシンキングに基づく「戦略的な先送り」の考え方(Vol.288)


コーポレート・アドバイザーズがお届けする「中村 亨の【ビジネスEYE】」です。

『戦略的な先送り』(PRESIDENT 2016.8.15)

日本のビジネス界では敬遠される「先送り」。ネガティブなイメージが強く、ビジネスの場において「先送りする」ということは「最悪手」であり、後に負の遺産を生み出す危険性さえはらんでいます。その一方で、欧米諸国では戦術の一つとしてこの『先送り』が駆使されている実態があります。この違いは一体なんでしょうか。本日のビジネスEYEでは、「戦略的な先送り」について考えてみます。

「場当たり的な先送り」と「戦略的な先送り」

元外交官の原田武雄氏(北東アジア課/北朝鮮班長などを歴任)いわく、交渉上手な国にはある特徴があるそうです。それは「独自の時間軸を持ち、逆算して現状の判断が出来ている」ことです。先を見据えているからこそ、目先の利益や判断に流されることなく進むことができる。

日本の経営者の方々も、中・長期経営計画を策定するなかで、目指すべきビジョンを確立されていると思います。ただ、日本と欧米諸国とでは、その時間軸が違うのです。欧米諸国は、日本人からすると考えられないほどのロングスパンで大局を読んでいるそうです。
ゆえに、突発的な問題が発生した際に対応の差が出るようです。

日本の先送りパターン

逆算ができず、目先の安全を確保するために、場当たり的な先送りで回避行動をとりやすい

欧米諸国の先送りパターン

逆算することで、損小利大を実現するための最適なタイミングを計り、その上で戦略的な先送りを選択・実施できる

字面は同じ「先送り」ですが、意味合い・効果がまったく違ってきます。日本の経営者・企業は今までにない『ロングスパンの時間軸』を意識することが必要となるでしょう。

「ハイコンテクスト」と「ローコンテクスト」

ハイコンテクスト、ローコンテクストという言葉をご存知でしょうか?アメリカの文化人類学者であるエドワード.T.ホール氏が唱えたコミュニケーション環境の識別法です。

ハイコンテクスト:言葉そのものよりも、文脈や背景・言外の意味を重視する
ローコンテクスト:言葉そのものの意味を重視する

日本は典型的なハイコンテクスト社会の国です。ほかにも中国、アラブ、ギリシャなどがこれに分類されます。一方のローコンテクスト社会の国は、ドイツ、アメリカ、フランスなどです。

ローコンテクストがグローバルスタンダード

勘の良い方ならお気づきでしょう。グローバルコミュニケーションのスタンダードは、ローコンテクストが重視されます。実際問題、グローバル環境で「察してくれるだろう」や「言わなくても分かる」は通用しませんよね。それゆえ、欧米諸国は強くかつシンプルな言葉を用い、物事をより有利な方向へと導くことができるのです。

先の「戦略的な先送り」の考え方も、欧米諸国のロジカルシンキングには、ごく当たり前のこととして組み込まれているのでしょう。
諸外国との交渉力の差はここにありそうです。

「ロングスパンの時間軸」と「ローコンテクスト」を習慣付けることは、グローバルビジネスの荒波を乗り越えるための最低要件となってくるかもしれません。

 

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