ソフトバンクグループの買収発表から考える「攻めのM&A」(Vol.286)


『ソフトバンクグループ、英ARM社の買収を発表』

7月18日、ソフトバンクグループ(以下ソフトバンク)が、英半導体設計大手のARMホールディングスの買収を発表しました。買収金額は日本企業の買収案件として過去最大となる3兆3000億円(240億ポンド)。M&Aの名手と言われる同社の狙いとは?本日のビジネスEYEでは、「攻めのM&A」について考えてみます。

攻めのM&Aへの布石

ソフトバンクは6月に入り、不穏な動きをみせていました。

資産売却により合計で2兆円近いキャッシュを手に

・「2000年に投資して以降1株も売却したことがない」と自慢していた中国ECサイト最大手のアリババHD株の一部放出。
・好業績で長い付き合いと豪語していたフィンランドのスーパーセル株を売却
・持ち分法適用会社のガンホー・オンライン・エンターテイメント株を売却

当初、ソフトバンクは一連の資産売却の理由を、「有利子負債の返済に充当するほか、一般事業目的に活用していく」としていました。確かに、同社の有利子負債は3月末で11兆9224億円と巨額であるため、少しでも返済圧力を低下させたいとの考えがあったのかもしれませんが、ただ、将来性を絶賛した優良株を売却してまで返済する理由がわかりませんね。

アローラ副社長の電撃解任

・「最も有力な後継候補」と言われたニケシュ・アローラ副社長が解任。
・円満退社を強調するも、一部では資産売却に関して孫社長と齟齬が生じたとの声も。

イギリスのEU離脱決定

孫社長は今回の買収とは無関係としていますが、イギリスがEU離脱を決定した影響により為替相場が大きく変動。ポンド安により約4000億円程度の差益を手にすることになりました。結果としてM&Aの後押し要因となった可能性もあります。

夢の実現

今回の買収によりソフトバンクが得られるシナジー効果はいったい何でしょうか?これは孫社長の会見のなかでも、明確な回答がありませんでした。推測にはなりますが、孫社長はIoT(Internet of Things)の領域に目を付けていると思われます。事実、経営として深く関わっていくとは言うものの、英ARMは独自路線を継続することになります。経営陣、雇用、本社等々はそのまま維持が買収条件にあったように思います。

2008年3月期の決算説明会の会見で孫社長が言葉にした「世界最大のモバイルインターネットカンパニー実現で世界を制する」。夢の実現に向け今回の買収が英断となるか否か、その結果はそう遠くない未来に答えがでるでしょう。

 

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