2016.06.14

ビジネスEYE Vol.279


コーポレート・アドバイザーズがお届けする「中村 亨の【ビジネスEYE】」です。

今年4月末に大規模再開発計画を発表したオリエンタルランド(OLC)。

2014年春に打ち出した計画をブラッシュアップした形での発表となりました。
計画内容が変更されることは多々ありますが、同社が軌道修正に踏み切った裏には、
ライバルの急伸や顧客離れといった危機感が滲んでいます。

本日のメルマガでは、“事業スピード”について触れてみたいと思います。

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◆ OLCの軌道修正の理由
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まずは、OLCが発表した開発計画を辿ってみましょう。

【2014年4月】「2016 中期経営計画」発表
今後10年間(15年3月期~24年3月期)で5,000億円レベルの大型投資に踏み切る

【2015年4月】「開発構想」発表
ディズニーランド(TDL):「ファンタジーランドの再開発」
/ファンタジーランドの面積を約2倍へ拡張。「美女と野獣」「不思議の国のアリス」をテーマとしたエリア新設。

ディズニーシー  (TDS):「8つ目の新テーマポートの開発」
/拡張用エリアを活用し、「アナと雪の女王」を含めた“北欧”をテーマとしたエリアの新設。

【2016年4月】
今回の軌道修正した計画を発表

計画内容は、「集客目標の達成時期を3年前倒しにする」といったもので、株式市場も好意的な反応をみせました。
ただ、ここで注目すべきは、“内容”ではなく、追記された“文言”にあります。
ここにOLCの焦りや危機感が如実に表れています。以下がその文言です。

「20年度までの5年間で2,500億円をTDL・TDSの両パークに投じ、顧客満足度を伴った3,000万人の集客目標を達成する」

分かりますでしょうか?
そうです。『顧客満足度を伴った』との文言が入ったのです。

これまで「利益主義」だの「露骨な金儲け主義」だのと、散々な陰口を叩かれてもディズニーというブランドを盾に素知らぬ顔をしていたOLCが反応したのです。

先のメルマガ(Vol.266)でもお伝えしましたが、
ここ最近のOLCは顧客満足度が急落、顧客離れの深刻化が表面化していました。
このタイミングで『顧客満足度』を謳う意味。如何に深刻な事態なのかが、窺い知れます。

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◆ 財務内容は健全なOLC
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問題が山積するOLCですが、財務内容は健全なのです。
ただ、売上高・利益率は高水準ながらも横ばい。今後の成長が見込み難い状況が続いています。

打開策としてディズニーに頼らない「事業の多角化」も視野に入れているようで、

ホテル事業(既存ホテルの買収・沖縄でのホテル開発)や自社農園の経営などに着手しています。

ただ、主力はやはりパーク事業なので、更なる成長には、パーク事業の飛躍が必須条件となります。

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◆ 事業スピード
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開発計画を軌道修正した理由として、上記では「顧客満足度の低下」を挙げましたが、もう一つ理由があったようです。
それが「事業のスピード」です。
OLCは“日本独自のパーク造り”に拘りをみせていますが、同社はあくまでも『東京ディズニーリゾートの経営・運営のみ』担当する“ライセンス契約”であるため、事業推進には、米ウォルト・ディズニー・カンパニーとの協議が必須要件となります。

大規模リニューアルともなれば、協議が難航するのは明白です。
OLCは、“大規模”による“インパクト”よりもスケールを縮小して事業スピードを上げることを選択しました。
この選択の裏には、ライバルとなるユニバーサル・スタジオ・ジャパン(USJ)の動向が影響したと推測されます。

USJもOLC同様、日本独自の路線をとって急成長を遂げています。
同社は2015年11月に米コムキャストに買収され、実質的に米ユニバーサルの直営に。
直営となったことで、強みであった“独自路線”が失われるのでは?との懸念がありましたが、維持される方針で決着。

これまでライバルらしいライバルが存在しなかったOLCだけに、事業スピードはそれほど重要なファクターではなかったと推測されます。

今後はスピーディーな事業開発と併せ、差し迫ったキャスト(従業員)教育の問題解決に奔走することになりますが、「顧客満足度を伴った3,000万人の集客」を実現するには、この2つが必須のファクターとなります。

 

以上、中村 亨の【ビジネスEYE】でした。

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