逆境こそ最大のチャンス、新生ニトリ”が目指すもの(Vol.278)


コーポレート・アドバイザーズがお届けする「中村 亨の【ビジネスEYE】」です。

「逆境こそ最大のチャンス」(週刊ダイヤモンド/2016年5月21日号)
29期連続増益増収(2015年度)という偉業を成し遂げたニトリ。今年2月には創業者の似鳥昭雄氏から白井俊之氏へと社長がバトンタッチされました。本日のメルマガでは、“新生ニトリ”が目指すものについて触れてみたいと思います。

ニトリの企業理念

ニトリグループの企業理念である「ロマン」と「ビジョン」。「住まいの豊かさを世界の人々に提供する」というロマン(志)のもと、長期ビジョンを描き、その実現に向けて全力を尽くす。」この企業理念には、創業者である似鳥昭雄氏(現在、代表取締役会長)が最も重視する「店舗数」と「年商」の2点にポイントが絞られています。現在示されているビジョンは下記の通りです。

ニトリのこれまでのビジョン

2003年 100店舗 / 売上高 1,000億円(達成)
2009年 200店舗 / 売上高 2,000億円(達成)
2012年 300店舗 / 売上高 3,400億円(達成)

ニトリが目指す、今後のビジョン

2017年  500店舗 / 売上高 5,500億円 『日本の暮らしを変革。グローバルチェーン展開の本格的なスタートへ』
2022年 1000店舗 / 売上高       1兆円 『世界でドミナントエイリア※を拡大し、暮らしの変革へ』
※ドミナントエイリア:チェーン展開をする際、地域を特定し、その特定地域内に集中した店舗展開を行うことで経営効率を高める
2032年 3000店舗 / 売上高       3兆円 『世界の人々に豊かな暮らしを提案する企業へ』

ポイントを2つに絞ることで、シンプルかつ具体的な数値目標をダイレクトに伝えることが可能となり、役社員間の連携や全社間でのビジョン共有に寄与しているのでしょう。『29期連続増収増益』の偉業はその賜物であると考えられます。

【ニトリの直近3期分の業績】

ビジョン達成への戦略

2015年度の主軸となった戦略は大きく2つ。銀座出店で話題となった「大都市圏への出店」と「プライスレンジ(価格帯)の引き上げ」です。いずれの戦略も功を奏し、新規顧客の獲得・増収増益へと繋がりました。

価格帯が差別化を促進

特に、プライスレンジの引き上げは、『他者との差別化』に弾みをつけました。二極化(消費者の年収/300万円台・600~800万円台)する消費者のニーズに応える格好で、低価格帯が中心だった商品構成に、デザイン・機能性といった付加価値を与えた中価格帯の商品を加えることで、プライスレンジの引き上げに成功しました。同業・異業種の多くの企業が「値上げ」で失敗するなか、「値上げ」を回避したことで、ブランドイメージ『低価格』を守ることにも成功しました。この戦略は、異業種の「しまむら」が同様の戦略をとっています。

”全体最適”の商品戦略を目指す

さて、30期連続増収増益に向けた白井新社長の経営戦略ですが、メインとなるのは『立地戦略』と『商品戦略の再構築』のようです。立地戦略(大都市圏への出店)については、白井氏が副社長時代から推し進めている戦略であり、新規ではなく継続の意味合いが強いでしょう。

注視すべきは「商品戦略の再構築」となります。「製造コストだけをみる“部分最適”から、トータルコストを考える“全体最適”へシフト」といったものです。この考え方は、モノづくりに限らず、すべての業種に当てはまります。

物事を多角的な視点から判断することで、機会損失を防ぐ効果が期待できます。ニトリにおいては、2014年から開始した「バーティカルマーチャンダイジング」の推進がそれに当たります。

新生ニトリ、逆境こそ最大のチャンス

社長交代会見の席で、白井新社長は次のような持論を述べました。「景気は上向いておらず、今後数年は下降まっしぐらに進むんじゃないかと考えている。~中略~どちらかというと逆境を待っている。なぜなら景気が良い時は他社との差が付かない。逆境は社員が育つ。」逆境でも成長できる自信の表れた強い言葉です。

似鳥氏に「バランス感覚の高さ」と「柔軟性」を評価された白井新社長。「ロマン」と「ビジョン」の実現のために、いつ攻め、何を守るのか。
実行役としての社長ではなく、独自の戦略・色を強く打ち出していくことが、30期連続増収増益、そして新生ニトリの誕生の鍵になるのかも知れません。

 

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