2016.05.19

ビジネスEYE Vol.277


コーポレート・アドバイザーズがお届けする「中村 亨の【ビジネスEYE】」です。

世界でロングセラーを続ける消費者のための行動心理学書の名著、
『影響力の武器 第三版 -なぜ、人は動かされるのか』(ロバート・B・チャルディーニ/誠信書房)。

本書はハーバード・ビジネス・レビュー誌、ニューヨーク・タイムズ誌など各誌が絶賛。
フォーチュン誌の“最も賢明な75のビジネス書”の一つとして挙げられ、CEOリード氏の“歴史上のビジネス書ベスト100”の一冊にも選ばれています。

第三版となり初めての人でも非常に読みやすく、共感しつつ読み進めることができると思います。

本日のメルマガでは、本書を通じて「経営者にとっての影響力の武器」について考察します。

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◆ 『影響力の武器』
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『影響力の武器』と非常にキャッチーなタイトルではありますが、その内容は、手の込んだ勧誘や悪意あるセールスからどうやって身を守るか?といった防衛策を中心に書かれています。

ただ、消費者目線の啓発本と括ってはいけません。

チャルディーニ氏が本書で提唱する6つの人間心理「影響力の武器」は、正しく活用すれば、ビジネスシーン、特にセールスや交渉といった場で、win-winの関係を築きながらも「YES」の言葉を引き出すといった“承諾誘導”の効果を発揮します。

では、『影響力の武器』の内容をみてみましょう。

【1】返報性
【2】一貫性・コミット
【3】社会的証明
【4】好意
【5】権威
【6】希少性

具体例については割愛しますが、各ポイントは以下のようになります。

【1】返報性
「他人から何らかの施しを受けた場合、そのお返しをしなければならない。」
ごく当たり前に抱くこの感情を「返報性の原理」といいます。つまりGive&Takeの関係です。一方的に与えられた状態にあると、人は心情的に不快に思う状態が続き、いつしか「返さなければならない」といった『義務感』に捕らわれるようになります。

【2】一貫性・コミット
人は一度決めたことを最後までやり抜こうとする傾向があります。一度ある立場を取る(コミット)と、一貫した行動をとるように圧力がかかります。しかも、状況が変化して自分が不利になった場合でも、この効力は持続されます。

【3】社会的証明
特定の状況である行動をとる人が多いほど、それを正しい行動だと判断する。分かりやすく言い換えれば、「赤信号、みんなで渡れば…」と同じことです。人は自分の意見に確信が持てない場合は、圧倒的に多数派に流れやすくなります。

【4】好意
好意を抱かせるポイントは3つ。
「外見の魅力」・「類似性」・「お世辞」
お世辞というとネガティブな印象を受けますが、例え的を得ていなくても、肯定的な意見・行為は好感を生み易くなります。

【5】権威
人は権威の実体よりも、「肩書」・「服装」・「装飾品(車)」などのシンボルに反応する傾向があります。

【6】希少性(プレミアム・レア)
手に入り難くなると欲しくなる。しかも以前から希少だったものよりも、新たに手に入り難くなったものをより欲しがる。

これらを勘案すると、人間の行動心理は、想像以上に“本能的な判断”に基づいているのが分かりますね。

他者(お客様)からYes(承諾)を得るためには、その本能の部分に如何に訴えかけるかが肝要となります。
「影響力の武器」を自身の営業手法に組み込むことで、核心へのアプローチ方法が多面的に広がるでしょう。

いきなり全てを取り入れるのは至難の技ですので、まずは自分に合った「武器」を探してみてはいかがでしょうか。

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◆ 経営にとっての『影響力の武器』
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主眼をビジネスシーンから、「経営」に置き換えて考えてみます。

【1】返報性 :トップ自らが率先して動くことで、従業員も何か返そうと行動する。
【2】一貫性 :トップダウンと併用し、従業員自らにコミットさせることで意識改革を図る。
【3】社会的証明:社としての方針・ビジョンを共有することで、一体感を生み出す。
【4】好 意 :コミュニケーションの取り組みによって親密性を向上させる。
【5】権 威 :権威だけを振りかざすのではなく、それに見合った実績等を示すことで組織を律する。
【6】希少性 :プロジェクトへの参加チャンスを競わせたり、各種コンペティションを開催することで、社内活性化を図る。

組織を率いていくという重責を負う経営者。様々な資質を求められますが、その一つに「人望」が挙げられます。

「人望」と聞くと、生まれついての天賦の才、といった印象を受けますが、決してそうではありません。
不断の努力により必ず身に付けることができる“才”であると私は考えます。

上記のような「影響力の武器」などを駆使し、社内外へメッセージを送り続けることが、結果として人望やお客様との繋がりを生む結果になるのではないでしょうか。

 

以上、中村 亨の【ビジネスEYE】でした。

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