燃費偽装問題に揺れる三菱自動車から考える「隠蔽体質の末路」(Vol.276)


コーポレート・アドバイザーズがお届けする「中村 亨の【ビジネスEYE】」です。

燃費偽装問題に揺れる三菱自動車。かつて2度にわたるリコール隠し(2000年、2004年)発覚により経営危機に陥った同社は、教訓を活かすことなく三度目の不祥事を起こしました。しかも燃費データの不正は、リコール隠し発覚よりも以前、1991年から行われていたことが判明。実に25年もの長きに渡り消費者を裏切り続けていたのです。本日のメルマガでは、「隠蔽体質の末路」について触れてみたいと思います。

自浄作用を持たない企業体質

2度のリコール問題を経て、同社は「信頼回復」を掲げ様々な施策を講じてきました。社内横断の品質担当部署の設置や内部通報制度の整備などが一例として挙げられますが、すべからく機能していなかったことが今回の問題で証明されてしまいました。今回の不正が発覚したきっかけは、日産自動車からの指摘といった具合です。

記者会見での相川社長の言葉は、どこか白々しさを感じます。「2000年のリコール事件以来、コンプライアンス第一を社内で浸透させることをやってきたが、やはり社員一人ひとりすべてに浸透させることはできなかった」。

同氏は「燃費偽装を知らなかった」との釈明を繰り返していますが、企業存続に関わるような事案を社員レベルで隠蔽できてしまう体制への責任はないのでしょうか?『組織の不正リスク管理』の根本的なところを理解できていないのでは?との疑念すら生じます。

日産自動車が資本参加という急展開

前回のリコール問題に端を発する経営危機の際には、ダイムラー・クライスラーによる支援打ち切りといった大義名分があったため、
三菱御三家「三菱重工業・三菱商事・三菱東京UFJ銀行」が支援に動き、事なきを得ました。しかし、今回は単なる不祥事であるため、支援を巡り御三家に温度差があるようです。

昨日、急展開な動きがありました。なんと、三菱自動車と日産自動車の両社が、幅広い戦略的アライアンスに関する覚書を締結したことを発表しました。当初は提携解消とみられていましたが、まさかの資本参加。三菱自動車が行う第三者割当増資を引き受ける形で株式の34%を取得する方向で調整、出資額は約2,650億円。御三家の保有率が約26%を超え、日産自動車は筆頭株主となります。

日産自動車が支援に動いた思惑には、既に提携している軽自動車の商品企画や開発に加え、海外(特に東南アジア)での生産・販売、そして三菱商事の存在でしょう。今回の業務締結により、業界再編の流れが加速していきそうです。

今後の動静に注目

目先の危機は過ぎ去ったように見えますが、「スリーダイヤブランド」の危機は続きます。隠蔽体質が招いた倒産危機。ブランドは失墜し、顧客が離れた今だからこそ、生まれ変わるチャンスなのかも知れません。

下記に挙げるのは、三菱財閥を創業した岩崎家の家憲です。先人の体験に裏打ちされた大変貴重な教訓が含まれた言葉ですね。

1.小事にあくそくたるは大事成らず。
2.一たび着手せし事業は必ず成功を期せよ。
3.決して投機的な事業を企つるなかれ。
4.国家的観念を以てすべての事業に当たれ。
5.奉公至誠の赤心は寸時も忘るべからず。
6.勤倹身を持し、慈恵人を待つべし。
7.よく人格技能を鑑別し、適材を適所に用いよ。
8.部下を優遇し、事業上の利益は成るべく多く彼等に分与すべし。

三菱自動車の再生の第一歩は、家憲を学ぶことから始まるのかも知れません。

 

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