2016.04.14

名門ミズノが陥った“経営戦略のズレ”(Vol.273)


コーポレート・アドバイザーズがお届けする「中村 亨の【ビジネスEYE】」です。

「国内と野球に執着 時代遅れの名門ミズノ」(週刊東洋経済/2016年4月16日号)

創業明治39年(1906年)の老舗企業であるミズノ。野球・ゴルフ用品を中心に一時代を築いた同社。現在もトップアスリートから絶大なる信頼・支持を集めていますが、経営面からみると明らかに低迷状態にあります。本日のメルマガでは、名門ミズノが陥った“経営戦略のズレ”について、触れてみたいと思います。

アシックスに差を付けられるミズノ

かつて国内2強と並び称されていた、ミズノとアシックス。現在ではアシックスの独壇場となっているようです。下記は両社の売上高推移です。

両社の年平均成長率(CAGR|Compound Annual Growth Rate)を求めると…ミズノが1.64%、一方のアシックスが10.74%。単純計算で成長速度の差が約6.5倍もあるということです。これだけの差を生んだ原因のひとつには“経営戦略”が挙げられます。

ミズノ低迷の理由は経営戦略の差

ミズノとアシックスの経営戦略の大きな違いは2つあります。『経営戦略が時代にフィットしているか否か』と『海外展開』です。

世間とのズレが生じたミズノ

ミズノが低迷した理由はここにあります。2強時代を築いたこと、そしてトップアスリートからの信頼を得たことが逆に経営判断を鈍らせたのかもしれません。「国内スポーツ人口が減少している」という重要なバックグラウンドの変化を見過ごし、“野球・ゴルフ”に集中し続けたことで、商売において致命的とも言える『世間とのズレ』を生じさせることになりました。

一方のアシックスは、バックグラウンドの変化に機微に反応した典型といえるでしょう。「国内市場の成長は限定される」との仮説を元に検証を開始していきます。まず、ゴルフ事業からの撤退を決断し、ランニングへと経営資金を集中させました。その際、これまで広告戦略の通例となっていた、トップアスリートによる広告塔を設けず、市民ランナーへスポットライトを当てるといった検証ともいえる施策を講じました。

そして、「海外展開」です。ミズノのズレはここでも大きく影響してきます。アシックスは仮説と検証を繰り返し、積極的に海外展開へ励みますが、ミズノはこれまでの経験則に縛られ、海外展開に出遅れることになりました。売上構成をみれば一目瞭然です。

アシックスは非常にバランスのとれたポートフォリオです。

名門ミズノの復活なるか

ミズノの佐野治・総合企画室部長が「事業ポートフォリオを見直す時期に来ている。投資の転換を進める必要がある」とのコメントを発表したようですが、見直し時期はとうの昔に来ていたのではないでしょうか。

ミズノはテコ入れ策としてカジュアルシューズブランドを立ち上げました…どうにも二匹目の泥鰌(ドジョウ)感が抜けません。新ブランドは1980年代に流行ったモデルだそうです。

勘の言い方ならお気付きでしょう。アシックスの「オニツカタイガー」がまさにそれです。(オニツカタイガーとは、1949年に鬼塚喜八郎氏が創業したスポーツシューズのブランド名)経営統合等で1977年に一度消滅したブランドでしたが、欧州でのレトロブームに乗る形で復活、日本でもリバイバルブームを巻き起こした実績があります。

経営戦略の肝は数ありますが、「世間とのズレをいかに抑えるか」も重要なファクターとなります。自社の強みに固執するあまり、事実から目を背ければ“検証”はおろか“仮説”も立ちません。既成概念や固定観念に捕らわれたのなら、ゼロベースでバックグラウンドを見つめ直すことも時には肝要でしょう。

 

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