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『マレーシアに「ららぽーと」 三井不動産、総額450億円』(日本経済新聞 3/28 電子版)
日本でもおなじみの商業施設「ららぽーと」が、マレーシアで開設されます。開業予定は2021年、店舗面積は8万㎡。日本最大規模の「ららぽーとTOKYO-BAY」(10.2万㎡)に迫る巨大施設になる見通しです。
総事業費は、約450億円。これは、三井不動産がこれまで行ってきた海外事業(商業開発)で過去最大となります。本日のメルマガでは、中国、台湾、シンガポール、マレーシアと積極的に海外展開を進める「三井不動産」について、触れてみたいと思います。
不動産業界の現状
不動産業界は、オリンピック特需などを期待し、表面的には活況にあると言えます。実際に都内のブランドエリアに限定されますが、数億円といった高額マンションの売れ行きも好調です。ただし、先行きとして考えた場合、決して明るいものではありません。都市再開発が一巡すれば需給は確実に緩みますし、超少子高齢化・人口減といった問題が重荷になってきます。足元が好調だからと胡坐をかいている余裕はないのです。
不動産業界の命題、それは「従来の不動産業から脱却し、収益の多様化を図ること」だと考えます。これに対する一つの解となるのが、三井不動産の『海外展開』です。
三井不動産の海外施策(商業施設)
国内のビル・商業事業の先細りを懸念した三井不動産は、『将来の収益基盤を育成・確保』するため、商業施設の海外(アジア圏)展開を積極的に行っています。冒頭に紹介したマレーシアへの事業展開について掘り下げてみましょう。
マレーシアには現在50店以上のショッピングモールがありますが、そのほとんどが今回建設予定の『ブキッ・ビンタン地区』に集中しています。代表的なショッピングモールには、伊勢丹が出店する「ロット10」やユニクロが出店する「ファーレンハイト88」などがあります。
マレーシアでもショッピングモールは人気が高い
日本人同様、マレーシア人もショッピングを好む傾向があるようです。ただ、現地のショッピングモールの業態は日本とは大きく異なります。国内のモール内でも映画館やゲームコーナーといったアミューズメント施設を併設している店舗はよく目にしますが、マレーシアは規模が違います。なんと本格的な遊園地を併設している店もあるのです。ショッピング以外の目的でも充実楽しめますので、週末や祝日は特に賑わいをみせます。人気のモールは、1カ月で約300万人もの人が訪れるそうです。
では、この激戦区で“ららぽーと”の勝算はあるのでしょうか。勝算とすれば、「ターゲットを中間層に絞った」点がまず挙げられるでしょう。中間層を意識したテナントリーシング、現地で人気の日系テナントを誘致するなどし、日本のブランド力を上手く活用しながら、他店との差別化を図っています。
住宅事業に参画するマーケティング
そして、もう一つは徹底的なマーケティング力だと思います。三井不動産は、商業施設を出店する前段で、必ずといっていいほど住宅事業に参画しています。推測ですが、おそらくはここで地域特有の商習慣、ニーズを拾い上げる作業をしているのではないでしょうか。
前週のメルマガで「その国・その地域特有のニーズを拾い上げ、最適なチャネルでサービスを提供できれば、自ずとブランド力も付いてくる。」と述べましたが、三井不動産はこれを実践しているように思えます。開業後にいかにマレーシア版“ららぽーたー”を増やせるかに注目です。
三井不動産の国内施策(商業施設)
先細りの市場とは言いましたが、国内市場向けにも盤石な布陣をひきます。同社の石神裕之常務執行役員は、2015年8月にダイバシティー東京で開催した「EXPOCITY」の記者会見で、今後の商業施設の開発の方向性について以下のように述べています。
・都市型、郊外型ともに商業施設を増やす
・銀座、表参道、渋谷といった駅周辺でのスタンドアローンの立地を含め、大きなバリエーションで考えていく
・これまでのファッションを売るところから、体験する、楽しむところを、今後は充実させていく
・従来の日本初、地域初という軸を外し、EXPOCITYでの(アミューズメントや体験型施設を拡充した)取り組みを進める
ショップという枠組みを打破し、ユーザーに対して如何にアクションが取れるか、が成功の鍵となるでしょう。異業種ではありますが、日産のスローガンが的を射ていると思います。「今までなかったワクワクを。」
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