2016.03.18

キヤノンに限らず、成長戦略の一環としてM&Aを掲げる企業は増加傾向(Vol.269)


コーポレート・アドバイザーズがお届けする「中村 亨の【ビジネスEYE】」です。

「キヤノン、東芝メディカル買収を発表 6,655億円で」(日本経済新聞HP/3月17日)

売却先候補として最有力視されていた富士フイルムとの勝負を制し、見事キヤノンが東芝メディカルの買収を発表しました。買収価格は、6,655億円。医療機器メーカーのM&Aとしては国内最大級の規模でクロージングとなりました。市場予想の買収価格(東芝メディカルの価格)は、4,000~6,000億円程度でしたので、単純に価格をみれば“割高”であると言えます。

本日のメルマガでは、「キヤノンの成長戦略」について、掘り下げてみたいと思います。

キヤノンと東芝メディカル

医療機器事業における2社の関係を見てみましょう。

【キヤノン】
・売上高1,000億円未満
・デジタルカメラ技術を生かした眼科向けの検査装置などが主力

【東芝メディカル】
・売上高2,799億円(2015年3月期)
・コンピューター断層撮影装置(CT)・磁気共鳴画像装置(MRI)で世界第3位

売上高をみても分かるように、東芝メディカルの方が圧倒的に格上です。東芝本体が傾かなければ、決して売りに出されることはなかったでしょう。医療事業で停滞していたキヤノンにとってはまさに、千載一遇のチャンスでした。本買収により、キヤノンは国内外の医療機器業界で、一躍トップクラスへと躍り出ることになります。今後は、カメラ・複合機に次ぐ第3の経営の主軸として、育成されていくことになるでしょう。

東芝がキヤノンを選定した理由

富士フィルムではなく、キヤノンが選定された理由は何でしょうか。考えられる理由としては、

1.買収価格と買収後の事業体制
2.手続きの確実性:事業の重複が少ないため、独占禁止法の審査が容易。
などが挙げられます。

両社が提示した内容にさほど違いはなかったと推測されます。これは、選定結果を受けた富士フィルムが、東芝に対し選定理由について質問状を送ったことからも明らかです。

ここからは推測になりますが、キヤノンと東芝には一定の信頼関係があったのではないかと思います。記憶に残っている方もいると思いますが、実は両社、過去に薄型ディスプレイSEDで共同開発・合弁会社を設立したことがあるのです。同じ条件が提示されたのであれば、見知った間柄であるキヤノンに任せたい。最終判断において人間の心情が働いたのかも知れません。

キヤノンの成長戦略

キヤノンを支えるデジタルカメラ事業と複合機事業。グローバルシェア(カメラ1位、複合機2位)もあり、安定した状態にあります。ただ、裏を返せば『成熟産業』となっており、ここからの大きな拡大・成長が見込めないということです。同社の経営課題は「新たな成長事業の創設と高成長の実現」でした。

キヤノンは、成長戦略の主軸としてM&Aを選択

昨年買収したのは、監視カメラ世界首位であるスウェーデンのアクシス社。買収価格は当時のキヤノンとしては過去最大規模の約3,300億円。今回の東芝メディカルが6,655億円でしたからで、是が非でもといった気迫を感じますね。

以前のメルマガ(Vol.264 「買収の条件」)で、買収の際には下記の3つの条件を試算することが肝要としました。
■ 新たなビジネスモデルが構築可能か
■ 革新的なサービスの開発・展開が可能か
■ 収益性と将来性が望めるまたは確保できるか

成長市場において、売上シナジー、コスト削減シナジーなどの効果を享受できることは、非常に大きなアドバンテージとなります。これは国内に限らず、先行する欧米企業とも互角に渡り合える力となります。これらを勘案すると、多少割高ではあったものの、今回の買収は理にかなったものであったと評価できるでしょう。

キヤノンに限らず、成長戦略の一環としてM&Aを掲げる企業は増加傾向にあります

とかく買収価格に焦点が集まりがちですが、その背景を読み解き、自社にフィードバックさせることこそが、M&A検討中の企業にとって、重要なヒントになるのではないでしょうか。

 

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