シェア2割突破-高まる中小監査法人の存在感(Vol.540)


監査法人を大手から中小法人へ変更する動きが活発化しています。

2021年上半期に監査法人の変更に関する適時開示を行った企業は173社(前年同期比55.9%増)で、中でも「大手」から「中小」への異動が全体の構成比42.2%と最多となりました。(帝国データバンク「上場企業の監査法人異動調査(21年上半期)」)

監査報酬引き上げを進める大手から中小企業のくら替えが目立つ形となりましたが、実際に規模が小さい企業の7割で監査報酬が減ったという結果が出ています。今回のビジネスEYEでは、3年連続で増加している上場企業の監査人交代についてその背景を見てみましょう。(参考:日本経済新聞21年9月11日・20年8月8日)

大手の報酬引き上げが交代を促進

退任した監査法人は「EY新日本有限責任監査法人」が51社と最多で、「有限責任監査法人トーマツ(46社)」、「有限責任あずさ監査法人(18社)」と続き、退任数上位5法人のうち4法人が4大監査法人とも言われる大手です。

公認会計士・監査審査会が企業の開示をもとにまとめた交代理由では、「報酬」「監査対応と監査費用の相当性」が全体の半数以上を占めました。

大手の監査報酬の引上げの要因の一つが、継続監査期間の長期化です。東芝やオリンパスなど大手企業の会計不正や、KAM(Key Audit Matter=監査上の主要な検討事項)の開示が21年3月期決算から始まることなどから、監査作業は増加傾向にあります。結果的に監査報酬を引き上げざるを得ない状況となり、それが監査法人交代の大きな引き金になったと考えられます。

監査報酬に関する15%ルール

さて、日本公認会計士協会が監査報酬に関する新ルールを導入検討、という気になるニュースはこの春に飛び込んで来たところでした。

企業1社からの報酬が監査法人の収入の15%を超える場合、その企業を監査できる期間を最長5年に限る、というものです。背景には、世界的に後を絶たない不正会計への懸念で、特定企業への報酬依存度を下げて独立性を担保したい考えがあり、適用時期は早くて24年3月期以降とされています。

このルールでは大手に限らず中小監査法人も影響を受けることになりますが、このようなニュースも監査法人の変更を後押ししているように見えます。

監査法人の交代が定着化

こういった監査法人の交代はここ数年で定着化の傾向にあります。2019年7月~20年6月の監査法人の交代は、金融庁が集計している中で過去最高となっていました。味の素が69年ぶり、大和ハウス工業が51年ぶりと長期に亘る継続監査を終了したケースもありました。

監査法人の変更は、前述のように監査期間の長期化によるなれ合いを防ぐ狙いの他、20年3月期から義務付けられた継続監査期間の開示義務による投資家の視線を意識した狙いもあります。

今後は、監査法人を大手から中小企業に移行した際に、以下に監査の質を維持できるかが問われていくことになるでしょう。目先のコストや収益性に目を奪われることなく財務諸表の信頼性をいかに担保するか、企業や監査法人は質の確保に向けた努力がより一層必要になってくると思われます。

※大手監査法人…EY新日本有限責任監査法人、有限責任あずさ監査法人、有限責任監査法人トーマツ、PwCあらた有限責任監査法人(帝国データバンク「上場企業の監査法人異動調査(21年上半期)」より)

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