2016.02.04

ビジネスEYE Vol.264


不正会計により経営危機に瀕した東芝。

昨年末にグループ唯一の黒字であるヘルスケア事業を売却することを発表しましたが、その入札期限が先月29日に締め切られました。

関係筋の話によると、応札数は10社程度、買収金額は4,000億円~6,000億円程度だそうです。

実現されれば、東芝もようやく一息です。

本日のメルマガでは「買収の条件」について考えてみたいと思います。

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◆ 優等生の東芝メディカル
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財務体質改善のために売却が決まった「東芝メディカル」。

室町社長(東芝)は会見のなかで『メディカルは非中核事業』などと強気なコメントを出していましたが…。
・ グループ唯一の黒字事業
・ ヘルスケア事業で世界シェア第3位
・ 将来性
これらを加味すると…やはり手放したくないでしょうね。
その後に「売却後も売却先と協力関係を結ぶ」とコメントしています。

■東芝メディカルの概要
・ 医療用画像診断装置(X線CT装置、MRIなど)や診断システムを主力に医療情報システムへ展開。
・ CT装置では、GE、シーメンスに次ぐ、世界3位の市場シェア。
<2015年3月期の業績>
・ 売上高2,799億円、営業利益177億円、経常利益221億円、当期純利益158億円。

■今回入札参加したとみられる企業(ロイター通信/1月27日配信記事)
・ 富士フイルムHD
・ KKR(米系投資ファンド)&三井物産
・ GE
・ キャノン
・ 日立製作所 (2016年2月3日の決算説明会にて入札不参加を明言)
・ コニカミノルタ&ペルミラ(英系投資ファンド)
・ サムスン

上記の中で特に有力視されているのが「富士フイルム」と「KKR」。

富士フイルムの強みは、何と言っても東芝メディカルとの補完関係が非常に高いことが挙げられます。そして、M&A戦略を活発化させている点も今回のディールのポイントと考えられます。

一方のKKRの強みは、実績とファンドという業態。2013年にパナソニックのヘルスケア部門を買収していますが、その後の業績も好調を維持。売り手からすれば、モデルケースがあることは安心感につながります。そして、ファンドであるため、『東芝ブランド』が残る可能性があるといったこともポイントになりそうです。

東芝に「買い戻しの青写真」があるのなら、必須要件ともいえます。

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◆買収の条件
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M&Aにおいて買収価格を決定する際、「EBITDA(イービットディーエー)」の「何年分」という評価方法を用いることがあります。

このEBITDAとは、利払前・税引前の『償却前利益』のことを指し、当期利益と異なり、税金や金利を支払前の“本業が稼ぐ収益力”を示します。また、会社によって異なる“償却方法の差”を排除できることから、『実態の収益』を示す指標としてよく用いられます。

なお、EBITDAは簡易的なキャッシュフローを示す指標としても使われます。
「買収価格(株価)は、X年分のキャッシュフローを付けた」といった目安になります。

この倍率が高いほど、買収代金を買収先から得られる利益で回収することができるタイミングが遅くなります。
つまり「買収はできたものの、投資金額を回収できない」という状態です。

トムソンロイターの発表をみると、EBITDA倍率が業種によって大きく異なることなることが分かります。

一般消費財(9.3倍)、生活必需品(8.2倍)、エネルギー(16.7倍)、ヘルスケア(24.0倍)、

ハイテク(15.1倍)、一般産業(14.6倍)、素材(16.1倍)、メディア(15.4倍)、不動産(16.0倍)、

小売(14.0倍)、通 信(12.4倍)
(トムソンロイター/「2015年(1/1~12/31)のEBITDA平均倍率(日本)」

 

EBITDA倍率が一番高いのはヘルスケア事業の24倍。
数値上では「24年間は投資回収ができない」ことになりますが、実際には「買収による相乗効果(シナジー)」が発生し、新たな利益が造られること」が期待されます。ゆえに『24年分のEBITDA倍率で評価しても買収する価値がある』といった試算が行われるのです。

つまり、「人気がある業種なので買収したい」と考えても、価格提示で負けてしまったり、無理をして最高値で買収できたとしても、投資金額を回収できずに、会社全体の経営に影響を及ぼしてしまう可能性もあります。

買収の際には「買収後の事業展開」を試算することが肝要でしょう。
■ 新たなビジネスモデルが構築可能か
■ 革新的なサービスの開発・展開が可能か
■ 収益性と将来性が望めるまたは確保できるか

以上、中村 亨の【ビジネスEYE】でした。

 

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