円滑な事業承継・M&Aを後押しするもとのして期待される、経営者保証に関するガイドライン(Vol.261)


融資慣行となっている、経営者による個人保証(経営者保証)。

特に中小企業の融資の際には、ほぼ必須の要件となっていましたが、2014年2月に「経営者保証に関するガイドライン」が公表されたことで、「経営者保証の提供なしの新規融資」や「既存融資の保証解除」などが可能となりました。これにより、中小企業の事業承継の選択肢を広げる可能性もあるようです。今回は「経営者保証に関するガイドライン」について考えてみたいと思います。

事業承継の選択肢を広げる「経営者保証に関するガイドライン」とは?

「長男に会社を継がせる前に、経営者保証を外したい」
「社内承継を考えているが、経営者保証がネックになっている」
「取引先に会社を引き継いでもらいたいが、経営者保証が重荷だ」

親族・社内・第三者、いずれに承継する場合においても、「経営者保証」が円滑な事業承継を妨げることがあります。このような背景のなか、事業承継の選択肢を広める可能性があるものとして期待されているのが、2014年2月に公表された「経営者保証に関するガイドライン」です。

金融庁・中小企業庁による要請のもと、すでに多くの金融機関が同ガイドラインに則した対応を実施しています。

ガイドラインの内容は?

これまで融資慣行として適用されていた「経営者保証」の在り方を考え直し、「経営者保証」に依存しない融資の道や、第二創業や事業承継を実施しやすい環境づくりに寄与する内容となっています。同ガイドラインの適用タイミングには、保証契約時と債務整理時の2つがあります。

【1.保証契約時の適用】

・これまで融資慣行となってきた「経営者保証」を提供しなくても、一定要件を満たすことで融資を受けることができる。
・保証契約後であっても、経営改善などが確認されれば“保証の見直し”がなされることもある。

【2.債務整理時の適用】

・経営者の個人資産を上回る“保証債務”が発生した場合、経営者の個人資産を一定額残すことができる。
・官報への掲載や信用情報機関への登録が回避されることもある。

そもそも、なぜ中小企業融資において「経営者保証」が求められるのか?

貸し手にとって、「経営者保証」はモラルハザードの防止や信用力補完といったリスクヘッジの意味合いを持ちます。
また、保証があるからこそ融資をスムーズに実行できるといったプラスの面もあります。一方、借り手にとっては、負の要素が多いものです。精神的な負担をはじめ、後継者問題を深刻化する恐れがあったり、他行の新規融資が受け難くなるなどデメリットが目立ちます。つまり、“重荷”と感じるケースがほどんどでしょう。

中小企業融資の利用状況は?

以下に利用状況を記載しますが、政府系・民間金融機関とも、活用実績を上げていますが、融資慣行として浸透・定着するにはまだまだ時間がかかりそうです。

【政府系金融機関】新規に無保証で融資した件数

2014年02月-09月: 9,428件(月平均  1,179件)
2014年10月-03月: 9,115件(月平均  1,519件)
2015年04月-09月:11,259件(月平均  1,877件)

【政府系金融機関】保証契約を解除した件数

2014年02月-09月: 2,853件(月平均 357件)
2014年10月-03月: 2,815件(月平均 469件)
2015年04月-09月: 1,858件(月平均 310件)

(中小企業庁:政府系金融機関における「経営者保証に関するガイドライン」の活用実績より抜粋)

【民間金融機関】新規に無保証で融資した件数

2014年02月-09月:72,666件(月平均  9,083件)
2014年10月-03月:65,469件(月平均 10,912件)

【民間金融機関】保証契約を解除した件数

2014年 2月-9月:13,280件(月平均  1,660件)
2014年10月-3月:10,095件(月平均  1,683件)

(金融庁:民間金融機関における「経営者保証に関するガイドライン」の活用実績より抜粋)

 

2月17日(水)開催の「M&Aサミット2016」では、中小企業基盤整備機構が主催する「経営者保証ガイドラインセミナー」のアドバイザーとして活躍された本澤弁護士にご登壇いただきます。円滑な事業承継・M&Aを後押しするもとのして期待される「経営者保証ガイドライン」に関して具体的な事例を交えてお話しいただきます。ぜひ、ご参加ください。

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