愛され続ける地場スーパーの共通点から考える軽減税率の影響(Vol.257)


12月16日、自・公両党は、消費税の軽減税率などを盛り込んだ来年度の税制改正大綱を決定しました。軽減税率の対象品目に注目が集まりましたが、マイナス影響が予想される業界からは、不安の声が聞こえてきます。本日のビジネスEYEでは、コンビニ業界が好調な一方で、客足が遠のいているスーパー業界における軽減税率の影響を考えてみたいと思います。

軽減税率と業界再編

来年度の税制改正大綱が決定

12月16日、自民・公明両党は、2017年4月に消費税の軽減税率を導入し、「外食」を除いた「生鮮食品」と「加工食品」のほか、定期購読の契約をした「新聞」に適用することなどを盛り込んだ、来年度の税制改正大綱を決定しました。軽減税率の導入により、スーパー業界、特に中小スーパーでは、システム投資や人手確保に伴う負担増が懸念され、食品スーパーの再編が加速する可能性もあるようです。

今年3月に行われた、中堅スーパー3社の統合効果の状況は?

マルエツ、カスミ、マックスバリュ関東の共同持株会社として、2015年3月にユナイテッド・スーパーマーケット・ホールディングス(U.S.M.H)が発足したことは、皆さんの記憶にも新しいと思います。U.S.M.Hが打ち出した中期経営方針は、「統合シナジーによる新たな価値創造」。

・健 康(商品、鮮度、機能性、食提案)
・地域社会(地域店舗、生活者、従業員、企業)
・価 値(サービス、利便性、経済性、味・品質)
の3つの視点から、統合シナジーによる新たな価値を具体的に形にして消費者に提供する、というものです。(参考:U.S.M.H 第1期第2四半期決算のご報告2015/11/27)

規模のメリットで業績堅調

統合から9ヶ月が経過しましたが、その効果は?「肉や魚をのせるトレーなどの資材」や「南アフリカのグレープフルーツを共同買い付けする」など統合に伴う規模のメリットを追求し、販管費や仕入れ原価を削減。また、新規出店進める一方、収益性の低い店舗は閉鎖することにより、業績は堅調に推移しているようです。(参考:日本経済新聞 2015/11/16)

2015年2月期の3社単純合算の売上高は6,471億円でしたが、東京五輪の開催年である2021年2月期には、売上高1兆円を目指します。

愛され続ける地場スーパーの7つの共通点

一方、小規模ながらも地域のファンを増やしている地場スーパーもあります。日本政策金融公庫が今年6月に発表したレポート「中小地場スーパーの生き残りをかけた取り組み」において、「強い中小地場スーパー」として取り上げられた9つのスーパーの共通点として以下のようなものが挙げられていました。

(1) 鮮度と品質 :新鮮なものを適正な値段で売る
(2) 安心と健康 :この店で買えば安心という信頼感
(3) 対話と信頼 :お客様との親密な距離感
(4) こだわり商品:そこでしか手に入らないものを提供する
(5) 相互利益 :こだわりの「作り手」や「市場・仲卸」との長期的な関係
(6) 地域とともに:地域コミュニティへの貢献
(7) 人づくり :仕事のやりがいが社員を育てる

例えば、愛知県の東三河地域に 5店舗を構える中小地場スーパー「サンヨネ」。美味しくて安全な食品を適正な価格で販売することで、『ヨネラー』と呼ばれる熱心なリピーターを持つほど、顧客から高い支持を受けているそうです。地場スーパーとして「目の届く範囲」を強く意識しており、今後も店舗数をむやみに拡大する意向は無く、既存の店舗において顧客満足度、従業員満足度の高いスーパーを目指しています。

自社は、生き残りをかけてどのような戦略をとるべきか?税制改正は、それを改めて考えるきっかけになるかもしれませんね。

 

中村亨のビジネスEYE メールマガジン
日本クレアス税理士法人|日本クレアス税理士法人│コーポレート・アドバイザーズでは、会計の専門家の視点から、経営者の次の智慧となるような『ヒント』をご提供しています。
> 日本クレアス税理士法人 サイトTOPに戻る <