調査結果の利用方法には注意が必要「満足度調査の罠」Vol.253


多くのサービス業が採用している「顧客満足度調査」。ただし、その調査結果の利用方法には注意が必要です。本日は、この「満足度調査の罠」についてお話しいたします。

満足度調査の罠

熾烈な顧客獲得合戦が繰り返される携帯電話業界。スマホ特需で盛り上がりをみせていましたが、近年は少し落ち着いてきた感があります。ただ、携帯各社は停滞期がみえているからこそ、攻める姿勢を崩しません。事実、連日のようにテレビコマーシャルを打つなど、様々な媒体で広告活動を続けています。

各社とも『他社との差別化』を図るため、「割引制度」「通信速度の早さ」「通信エリアの広さ」に加え、機種自体の魅力を必死にアピールしています。先日オリコン社が発表した『日本顧客満足度調査』のなかで、携帯ユーザーに対して行った調査がありました。調査内容は、2014年と2015年6月時点での、各携帯キャリア(docomo、au、SoftBank、その他)への満足度を調査するものでした。

その結果、ユーザーが携帯キャリアに求める価値が、わずか1年で大きな変化をもたらしていることがわかりました。具体的には「料金プラン」を重視する人の割合が低下し、その一方で「通話品質」「会社の信頼性」を重視すると回答した割合が上昇していたのです。その結果、業界最安を追い求め2014年には首位に君臨していたSoftBankが、2015年では3位に転落。そして、2014年には3位に甘んじていたdocomoが1位に再浮上する事態がおきました。(東洋経済オンライン 10月17日)

多くの顧客はクレームを言わない

満足度調査の結果は決して定まることはなく、刻一刻とその姿を変えていきます。ただし、すべての顧客が必ずしも本心から調査に回答しているとは限らないのも事実です。1970年代にアメリカで実施された「消費者によるクレームに関する全国調査」によると、「サービスに不満を感じた人の96%は、その企業に対して何も言わない」という調査結果があります。

特に、日本人は面と向かってクレームを言わない国民性がありますので、多くの客はクレームを言わずに去っていく傾向にあり、その傾向は企業と顧客のつながりが弱い、BtoCビジネスで顕著に表れます。満足度調査の調査結果は良好なのに、業績が伸びないという場合には、まさにこのケースに該当している可能性がありそうです。

「満足度調査はウソをつくが、クレームは嘘をつかない。」ということを念頭に置いて、満足度調査を利用する必要があるでしょう。
 

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