中堅・中小企業の人事戦略に大きな影響を与える『改正労働者派遣法』(Vol.245)


『安全保障関連法』が成立する中、もう一つの重要法案である『改正労働者派遣法』が成立し、9月30日施行という運びとなりました。そこで本日のビジネスEYEでは、中堅・中小企業の人事戦略に大きな影響を与える『改正労働者派遣法』について考えてみたいと思います。

今月30日 改正労働者派遣法施行

企業の派遣受け入れ期間を事実上なくす『改正労働者派遣法』が11日、衆院本会議で可決・成立し、今月30日から施行されることが決まりました。現行の派遣法では、研究開発や通訳など26の専門業務を除き、企業が派遣労働者を受け入れる期間を最長3年に限っていますが、改正法ではこうした“業務の区分”と“受け入れ期間の上限”が全業務において撤廃され、新しい期間制限(個人単位と事業所単位)が採用されます。

個人単位の期間制限

・1人の派遣労働者が企業の同じ部署で働ける期間を3年に制限する。
・「課」を異動すれば、同じ派遣労働者が3年を超えて就業を続けることができる。

事業所単位の期間制限(人・部署問わず)

・3年毎に派遣労働者を変えれば、どの業務でも3年を超えて派遣労働者に仕事を任せることが可能。

※期間経過日の1カ月前までに過半数組合等からの意見聴取が必要。更に3年間延長も可能(その後も同手順で何度でも延長が可能。

一方、派遣労働者からみると、3年おきに仕事が変わることになるため、雇用は不安定になります。そのため、会社には派遣労働者を継続して雇用するための措置を図る義務を課し、雇用が不安定になるのを避けます。具体的には、同じ職場で勤務が3年を超えた人は、派遣先の企業が直接雇うよう依頼することを派遣元に義務付け、断られた場合には新しい派遣先の紹介などが義務付けられます。ただし、派遣元の義務は直接雇用を要請することだけで、“派遣先の企業がそれに応じる義務はない”のがポイントです。

一方の株式市場

11日の衆院本会議で改正労働者派遣法が成立し、人材関連事業の拡大につながるとの思惑が広がったことから、同日の東京株式市場で人材関連株の上昇が目立っています。パソナグループは一時、前日比64円(6%)高まで上昇、フルキャストホールディングスも一時、58円(7%)高まで買われる展開となりました。(日本経済新聞 9月11日より)

改正法では、派遣会社に“スタッフへの教育訓練”なども義務付けられているため、この負担増に対応できない中小の派遣会社を中心に、派遣業界の再編が加速することが見込まれます。中堅・中小企業においては、「人材不足」という恒常的な問題を前提に、派遣を含めた働き手をどう確保するか、今後、明確な人事戦略が必要になってくるでしょう。

 

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