「中小企業の海外事業再編事例集」をもとに考える、海外進出の際の心得(Vol.242)


中小企業庁は今年6月、海外進出した中小企業が課題に直面した際に“事業の縮小”や“撤退”など、事業再編に取り組んだ28の事例をまとめた「中小企業の海外事業再編事例集(事業の安定継続のために)」を公表しました。大企業だけでなく、中小企業も『需要の創出・獲得』を狙った海外進出が加速傾向にありますが、その一方で、既に海外進出を行っている中小企業が「事業の縮小・撤退」等の判断をするケースも増加してきているのです。

そこで本日のメルマガでは、この「中小企業の海外事業再編事例集」をもとに、海外進出の際の心得について考えてみたいと思います。

海外事業の課題とリスク

2013年12月、損保ジャパン日本興亜リスクマネジメントが行った「中小企業の海外展開の実態把握にかかるアンケート調査」によると、海外展開している中小企業のうち、「直接投資先から撤退した経験がある」または「撤退を検討している」と回答した企業が、海外に展開している中小企業1,326社のうち435社、約3割にのぼりました。

企業が海外で事業運営することの難しさが浮き彫りになっています。多くの課題やリスクに晒されていることが容易に想像つきますが、なかでも「直接投資企業が直面している課題とリスク」として多く挙げられているのが、以下の4つです。

1.現地人材の確保・育成・管理
2.人件費の高騰
3.採算性の維持・管理
4.販売先の確保

実は、2012年に公表された中小企業白書でも、上記の4つの課題とリスクが掲載されています。いかに多くの企業が同種の課題・リスクに悩まされているかが、お分かりいただけると思います。今回、中小企業庁が公表した「中小企業の海外事業再編事例集」では、これらの点を踏まえ、「海外進出前の留意点」として次の事項を挙げています。

1.進出の動機を明確にしよう
2.パートナーは慎重に選ぼう
3.環境規則の強化に備えよう
4.国家紛争が発生することも
5.万が一の撤退や移転を想定した事業計画を立てよう
6.撤退や移転にかかる費用を確保しておこう

海外進出成功の第一歩は、「楽観」と「悲観」の同居

特に、海外進出の際のパートナー選びは非常に重要です。現地で騙されないように雇ったはずのパートナーに騙される、というのはよく耳にする話です。また、海外進出に限らず、新規ビジネスを始める場合にも共通しますが、「撤退ライン」をあらかじめ設定しておくことが重要です。

「進出直後は損を覚悟し、大きな投資は控える」
「パートナーに任せつつも、完全には任せない」
このような「楽観」と「悲観」の2つの視点を常に同居させることが、海外進出成功の第一歩と言えるのではないでしょうか。

 

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