不調企業の「余裕」と好調企業の「リスク」(Vol.239)


先日、東洋経済オンラインが『好調・不調企業ランキング』を公表しました。そこで本日のメルマガでは、このランキング結果から見えてくる不調企業の「余裕」と好調企業の「リスク」について考えてみたいと思います。

不調企業の「余裕」と好調企業の「リスク」

まずは、「不調企業ランキング」のトップ3

直近本決算までに営業利益が‘過去3年以上’に亘って減少している約150社をランキングしたところ、最長年数は7年でダスキン、アツギ、カンロの3社。
ダスキンはモップやマットのレンタルのほか、「ミスタードーナツ」の運営で知られています。
アツギは、ストッキングやインナーの国内大手。
カンロはのど飴などキャンディーを主力とするメーカーです。

この3社の連続減益の要因を見てみると、
第1位のダスキンは、そもそも「売上自体が減収しているタイプ」
第2位のアツギは、売上は増収傾向にあるが原価高騰のあおりを受けて「粗利率が低下しているタイプ」
第3位のカンロは、売上は増収・減収の波があるものの、物流費の高騰や広告宣伝費の計上など「販管費の増加が減益の主要因になっているタイプ」
であり、それぞれの企業のビジネスモデルの課題が見えてきます。

ちなみに、この3社に共通するのは「社歴の長さ」と「給与水準の高さ」、そして「自己資本比率の高さ」です。

◆社歴の長さ
・ダスキン:第54期
・カンロ :第66期
・アツギ :第90期

◆給与水準の高さ(臨時従業員を除く/有報提出会社の平均給与)
・ダスキン:700万円台
・カンロ :500万円台(上場企業の平均)
・アツギ :500万円台( 同上 )

◆自己資本比率の高さ
・ダスキン:75%前後
・カンロ :60%前後
・アツギ :84%前後

ここから読み取れるのは、過去の利益の積み立てが潤沢にあるがゆえに、連続減益による危機感を麻痺させている状況を感じとることができます。

一方、「好調企業のランキング」のトップ3

「連続増益年数が多い企業」のランキングをみると、第1位はニトリHDとヤオコー。ニトリは言わずと知れた全国トップの家具・インテリア製造小売りチェーン。実はニトリは‘連続増収’でも1位にランクインしており、1989年の上場前から「増収増益」を続け、営業増益は最新決算時点で28年連続という記録を持っています。ヤオコーは埼玉を地盤とする食品スーパー。独立系で提案型の売り場づくりに定評がある企業です。ちなみに第3位は、ドンキホーテHDで20年連続の増益。トップ3には個性的な「製造小売り」または「小売業」が並んだ格好です。

余談ですが、直近の売上高4兆5,731億円、営業利益7,412億円と他社から群を抜く規模で‘15年増益’を続けているのは、ランキング第5位のKDDI。さすがの超優良企業が名乗りを上げています。

好調企業の課題は粉飾決算リスク

この連続増益企業ランキングにあがっているのはいずれも超優良企業ですが、あえて課題を上げるとすると、それは「粉飾決算リスク」。多くの企業は、コストの削減やビジネスモデルの変更等を通じて増益を達成しているはずですが、連続増益のプレッシャーは先日の「東芝」のように不正会計を通じた増益決算の誘惑を招きます。

企業環境が激しく変わり、新たなライバル企業も台頭する中、何年も連続で増益を続けるのは至難の業。決算書を分析する際には、公表された情報を鵜呑みにせず、その企業を取り巻く環境、同業他社の決算状況などを考慮する必要がありそうです。

 

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