軽自動車の販売台数にて国内屈指の『スズキ』は6月30日、鈴木修会長兼社長(85)が社長を退任し、会長兼CEO(最高経営責任者)に就任、長男である鈴木俊宏副社長(56)が社長兼COO(最高執行責任者)に昇格する人事を発表しました。いわゆる「親族内承継」です。
大小関わらずあらゆる企業で後継者不足の問題が叫ばれる中、親族内承継のメリット・デメリットを中心に、「事業承継のあり方」について考えてみたいと思います。
身内を後継者とする「親族内承継」の是非
今回のスズキのケースに限らず、身内を後継者とする「親族内承継」は多くの企業で行われています。この親族内承継のメリットとして一般的以下のように考えられています。
親族内承継のメリット
1.一般的に他の方法(親族外承継やM&Aなど)と比べ、企業内外の関係 者から心情的に理解が得られ易い
2.後継者が早期に決定するため、後継者教育等のための長期の準備期間を確保することができる
3.相続等により財産や株式を後継者に移転できるため、他の方法と比べて、所有と経営の分離を回避できる可能性が高い
等が挙げられます。ただ、その一方でデメリットも持ち合わせています。
親族内承継のデメリット
1.親族内に、経営の資質と意欲を併せ持つ後継者候補の存在が必要
2.相続人が複数いる場合、後継者となる相続人へ経営権を集中させることに困難が伴う場合がある
それでは、親族に後継者としてのスキルを持った人材がいる場合、安易に親族内承継を選択すればいいのでしょうか?先代と後継者の間で大きな確執を生んだ「大塚家具」の事例を見ていると、必ずしも親族内承継を選択することが、円満な承継を生むとは言い切れません。この問いにひとつのヒントを与えてくれるのが、こちらもカリスマ社長の存在で業績を伸ばしてきたTV通販番組の「ジャパネットたかた」。
「ジャパネットたかた」の親族承継の考え方
同社は、今年の1月創業者である高田明氏が、長男である高田旭人氏に経営をバトンタッチしました。創業者である高田明氏は、2015年6月3日に開催された「経営プロサミット2015」の講演の中で、事業承継について次のような想いを語っています。
『今の新社長は長男なんですけども、私からしたら世襲じゃないんですよ。今1,800人くらい(社員が)いる中で、もっとも戦って、もっともぶつかって、もっとも議論をして、本音でぶつかってきた仲間なんです。そういう中で私は“この人に託せば、企業を100年200年(続くように)やってくれるかな”と。1,800人の中から選んだトップがたまたま長男だったと、それだけのことなんです。』
『(中略)企業のミッションをしっかり引き継いでくれる人、理念。この理念共有というのは一番大事です。引き継ぐとき、自分の部下を自分の地位にしようと思うときには、企業の理念・価値というものを共有しなかったら、どんなにその人にスキルがあってもダメだと思うんですよね。』
『事業』の承継だけではなく、『企業の存在価値』をいかに承継していくのか?事業承継を成功させる一つのカギと言えそうです。
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