治療と仕事の両立支援(Vol.559)


中村亨の「ビジネスEYE」です。

近年、日本の労働人口の約3人に1人がなんらかの病気を抱えながら働いています。

かつて「不治の病」とされていたガンなども、診断技術や治療方法の進歩により、「長く付き合う病気」に変化しています。

今後、企業においては、仕事しながらも病気療養のため通院できる仕組みや、心身への負担を考慮した配置転換など、病気を抱える従業員に対し、治療と仕事の両立できる環境整備等を取り組むことが必要になってきています。

今回のビジネスEYEでは、治療と仕事の両立支援の現状や取り組みの例をご紹介します。

両立支援の実現を見据えたガイドライン

厚生労働省では、「事業場における治療と仕事の両立支援のためのガイドライン」を策定しました。

このガイドラインでは、治療と仕事の両立に向けた様々な支援策を検討する上での留意点や病気ごとの留意事項まで幅広く記載されています。

治療と仕事の両立支援は、従業員の私傷病に関するものなので、基本的には従業員本人からの支援の申し出をきっかけに取り組むことになります。従って、会社は従業員や家族などを介して医療機関とやり取りし、具体的な就業上の支援措置や配慮すべき内容を決めることになります。

両立支援制度を整備していくにあたっては、

  1. 両立支援のための社内ルールの作成
  2. 両立支援に関する意識啓発のための研修の実施
  3. 相談窓口の設置


なども必要になります。

厚生労働省では情報ポータルサイトとして「治療と仕事の両立支援ナビ」を開設しています。
両立支援にまつわる様々な情報や他社事例なども紹介されておりますのでご参照ください。

傷病手当金の支給期間の改正(2022年1月)

「傷病手当金」の支給期間が「支給開始日から1年6か月を経過する日まで」から「通算1年6か月間※」へ改正されました。

従業員が私傷病により休業した場合、健康保険からは傷病手当金が支給されますが、ガン治療のため入退院を繰り返す場合や、ガンが再発した場合などに柔軟に制度が利用できるよう取り扱いが変わります。

2022年1月から、支給期間の1年6か月のうち、出勤に伴い不支給となった期間がある場合、その分の期間を延長して受けられるようになりました。

※支給開始日が2020年7月1日以前の場合には、これまでどおり支給を始めた日から最長1年6ヶ月。

両立支援における助成金の活用

企業が活用できる公的支援制度には、次の「治療と仕事の両立支援助成金(令和3年度版)」があります。

①環境整備コース

助成対象:両立支援コーディネーターの配置と両立支援制度(勤務制度や休暇制度等)の導入を新たに行った場合
助成額:200,000円

②制度活用コース

助成対象:両立支援コーディネーターを活用して両立支援制度を用いた両立支援プランを策定し実際に適用した場合
助成額:200,000円

両立支援に関する社内制度の例

両立支援に関する社内制度の例として、私傷病休職制度、積立年次有給休暇制度、リハビリ出勤制度などが挙げられます。
前述の社内制度の他にも、企業の状況に応じて様々な制度がつくられています。

誰もが病気に罹患する可能性のある中で、企業が治療と仕事の両立支援制度を打ち出し、支援体制を整備していくことは、従業員の安心感につながります。

これからは労働力人口の減少による高齢化問題なども伴い、職場において病気を抱えながら働く労働者は増えてくることが予測されます。

前述のガイドラインや情報ポータルサイト等の情報も参考にしながら従業員が治療を続けながらも能力を十分に発揮できる両立支援制度を検討してみてはいかがでしょうか。

◆お問合せ◆
日本クレアス社会保険労務士法人
電話:03-3593-3241
お問い合わせフォーム:https://ca-sr.com/contact/

◆参考リンク◆
厚生労働省
●治療と仕事の両立支援ナビ
https://chiryoutoshigoto.mhlw.go.jp

●令和4年1月1日から健康保険の傷病手当金の支給期間が通算化されます
https://www.mhlw.go.jp/content/12400000/000857062.pdf

独立行政法人労働者健康安全機構
●治療と仕事の両立支援助成金
https://www.johas.go.jp/Portals/0/data0/sanpo/leaflet/ryouritusienjoseikin_R3_2.pdf

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