いわゆる「シフト制」により就業する労働者の適切な雇用管理を行うための留意事項(vol.563)


中村亨の「ビジネスEYE」です。

人手不足や労働者のニーズの多様化、季節的な需要の繁閑への対処等のため、労働契約の締結時点では、労働日や労働時間を確定せず、パートタイム労働者やアルバイトを中心に、いわゆる「シフト制」をとることが多くあります。
シフト制には、その時々の事情に応じて柔軟に労働日・労働時間を設定できるという点で使用者及び労働者の双方にメリットがあり得えます。
一方、使用者の都合により労働日がほとんど設定されなかったり、労働者の希望を超える労働日数が設定されたりすることにより、労使トラブルに発展することもあります。
このため、厚生労働省では本年1月に、シフト制による労使トラブルを予防し、労使双方にとってシフト制での働き方をメリットのあるものとするため、現行の労働関係法令等に照らして使用者が留意すべき事項を示しました。
今回のビジネスEYEでは、その「いわゆる「シフト制」により就業する労働者の適切な雇用管理を行うための留意事項」を見てみましょう。

「シフト制」労働契約の締結に当たっての留意事項

【始業・終業時刻】

労働契約の締結時点ですでに始業と終業の時刻が確定している日については、
労働条件通知書などに単に「シフトによる」と記載するだけでは足りません。

労働日ごとの始業・終業 時刻を明記するか、原則的な始業・終業時刻を記載した上で、
労働契約の締結と同時に定める一定期間分のシフト表等を併せて
労働者に交付する必要があります。

【休日】

具体的な曜日等が確定していない場合でも、
休日の設定にかかる基本的な考え方などを明記する必要があります。

上記留意事項を踏まえ、労働契約に定める内容として考えられる例

1・シフトの作成に関するルール

  • シフトの作成時に、事前に労働者の意見を聞くこと
  • シフトの通知期限 (例:毎月○日)
  • シフトの通知方法 (例:電子メール等で通知)

2・シフト変更に関するルール

  • 一旦確定したシフトの労働日、労働時間をシフト期間開始前に変更する場合に、使用者や労働者が申出を行う場合の期限や手続
  • シフト期間開始後、確定していた労働日、労働時間をキャンセル、変更する場合の期限や手続

 
   ※一旦確定した労働日や労働時間等の変更は労働条件の変更に該当し、使用者と労働者双方の合意が必要(労働契約法第8条)

3・労働日、労働時間などの設定に関するルール

  • 一定の期間中に労働日が設定される最大の日数、時間数、時間帯
    (例:毎週月、水、金曜日から勤務する日をシフトで指定する)
  • 一定の期間中の目安となる労働日数、労働時間数
    (例:1か月○日程度勤務/1週間あたり平均○時間勤務)
  • 一定の期間において最低限労働する日数、時間数
     (例:1か月○日以上勤務/少なくとも毎週月曜日はシフトに入る)

就業規則に規定すべき事項

シフト制労働者に関しては、就業規則に関しても「個別の労働契約による」、「シフトによる」との記載のみにとどめた場合、就業規則の作成義務を果たしたことになりません。

ただし、基本となる始業及び終業の時刻や休日を定めた上で、「具体的には個別の労働契約で定める」、「具体的にはシフトによる」旨を定めることは差し支えありません。

※シフト制労働者に対して一か月単位の変形労働時間制を適用する場合には、就業規則において、具体的な労働日や各日の始業及び終業時刻(月ごとにシフトを作成する必要がある場合には、全ての始業及び終業時刻のパターンとその組み合わせの考え方、シフト表の作成手続及びその周知方法等)を定める必要があります(昭和 63 年3月14 日基発 150 号参照)。

今回、「シフト制」における雇用管理の留意事項が示されたことに伴い、労働基準監督署による臨検等の調査では、
「始業及び終業の時刻」や「休日」を「シフト制による」とのみ記載された労働条件通知書や就業規則について、「労働条件を示したことにならない」と指導が行われる可能性が高まります。

厚生労働省のリーフレットには、「シフト制労働契約簡易チェックリスト」も掲載されていますので、シフト制を取り入れている企業においては現状の運用を確認し、必要に応じて見直しを行うことをお勧めします。

―厚生労働省―
「いわゆる「シフト制」により就業する労働者の適切な雇用管理を行うための留意事項」
https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_22954.html

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