中村亨の「ビジネスEYE」です。
財務情報と、ESG(Environment(環境)、Social(社会)、Governance(企業統治))などの非財務情報をまとめた「統合報告書」を発行する企業が増えています。
ESG投資の世界での広まりや、東京証券取引所の新市場区分「プライム市場」で高い水準の情報開示を求められることなどが背景にあるようです。
今回のビジネスEYEでは日本における統合報告書発行の様子と、今後の課題について見てみましょう。
統合報告書を発行する企業は増加傾向
KPMGジャパンの調査によれば、2021年に統合報告書を発行した企業は非上場企業や大学も含めて716社で、2014年と比較すると5倍になりました。
大手企業だけでなく、中堅・中小規模の企業でも発行が増えており、売上高が5000億円未満の企業は前年から3割増と伸びは大きく、売上高1000億円にしぼると7割増となりました。
開示の背景には東証の市場区分見直し
2022年4月4日から、東証では「プライム市場」「スタンダード市場」「グロース市場」の新しい3区分がスタートしました。
昨年6月に改定された企業統治指針において、上場企業はESGの方針や取り組みの開示が必要になり、プライム市場の企業には気候変動開示の質と量の充実が求められることになりました。
ESG課題を特定して二酸化炭素排出削減や人権方針の目標を定めたり、健康経営への対応を盛り込んだりする企業があり、目標設定の有無や内容は企業によってさまざまです。
開示内容には課題あり
環境や社会問題は幅広く、企業によって取り組むべきESG課題は異なります。
さらに日経平均株価を構成する225社のうち、統合報告書の中でESG課題を記載するものの、経営戦略との関係を説明した企業は48%、関連するESG指標の目標と実績を開示した企業は56%にとどまります。
また投資家の注目度が高い気候変動に関する情報開示については、225社のうち184社が気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)の提言に賛同しているものの、そのうち約2割の企業はTCFDに沿った提言をしていない、という現状があります。
世界でESG投資は広がっており、投資家の参考になる情報の充実は欠かせません。
ただし、やみくもにESGに関して網羅的に情報を載せるのではなく、自社の企業価値の創造に寄与するような情報が求められるでしょう。
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