経理担当者の疑問を解決!電子取引となる見積書データの取扱い(vol.586)


こんにちは、中村亨です。

今回のビジネスEYEでは、2024年1月から改正電子帳簿保存法における電子データ保存の義務化に向けて、国税庁が今年7月に新設した「電子帳簿等保存制度 特設サイト」をご紹介します。
あわせて、経理担当者であっても迷いやすい事例である「電子データ保存をすべき見積書データの取扱い」についてもまとめました。

電子帳簿等保存制度特設サイトの開設

今年1月、改正電子帳簿保存法が施行されましたが、電子取引の電子データ保存の義務化は2年先延ばしとなりました。
そのため電子帳簿保存法の取扱いについて所得税法・法人税法上の保存義務者の理解・認識が遅れ、2022年10月現在、考え方の普及は道半ばに等しい状況かと思います。

そのような中、国税庁は2022年7月25日に、国税庁のホームページ上に「電子帳簿等保存制度 特設サイト」を設置。
どなたにでも情報の収集がしやすくなりました。
https://www.nta.go.jp/law/joho-zeikaishaku/sonota/jirei/tokusetsu/index.htm

特設サイトのトップページでは「制度別に調べる」「項目別に調べる」「製品・問い合わせ先を調べる」のカテゴリに分かれているため、検索しやすくなっています。

特に2024年1月から義務化となる「電子取引」については、上述の「制度別に調べる」から「電子取引」に入っていただくと、パンフレットや紹介動画、良くあるご質問や電子取引の対応市販ソフトの紹介、事前相談窓口への案内など分かりやすく掲載されています。
電子取引において迷ったときは、まずは特設サイト内をのぞいてみてください。

電子取引の対象となる見積書の取扱い

改正電子帳簿保存法における義務化対応となるものは「電子取引」です。
この電子取引の保存対象となっているのは、取引に関して受領し、又は交付する注文書、契約書、送り状、領収書、見積書その他これらに準ずる書類に通常記載されるものとしています。

このうち、「見積書データ」については、実務上においては正式な受発注取引が成立するまでに受注側は何度も発行することがあります。
また、発注側においては相見積もりを複数の会社とやり取りすることで、何種類もの「見積書データ」が存在することになります。

これらの取扱いについて、電子帳簿保存法取扱通達7-1(電子データにより保存すべき取引情報)(2)において、「取引情報の授受の過程で発生する訂正、加除の情報を個々に保存することなく、確-定情報のみを保存することとしている場合には、これを認める。」と規定しています。
https://www.nta.go.jp/law/joho-zeikaishaku/sonota/030628/pdf/02.pdf

ここで言う「取引情報の授受の過程で発生する訂正、加除の情報を個々に保存することなく」というのは、単に見積書データの記載に誤りがあった場合のことを指しています。
誤りの見積書データは保存を要せず、修正後の確定データのみを保存することを認めるものと解されます。

しかし、同通達7-1(2)解説では、「前の見積金額を変更して、新たな見積金額として確定する場合には各々の見積金額が確定データとなるのであるから、最終的に合意に至った見積書データを保存するのではなく、各々の見積書データで保存することに留意する」と付記書きされています。

つまり、前の見積書データの金額を変更して新たな見積金額を提示するために再発行した見積書データについては、同通達の解説の取引内容に該当するため、見積金額変更前の没となった見積書データも保存する義務が生じることになります。

また、発注側の会社が複数の会社とコンペティションを行い、それぞれの会社から見積書データを受領した場合も、最終的に契約に至った会社の見積書データだけでなく、契約とならなかった会社の見積書データも、「各々の見積書データで保存する」ことに該当すると思われるため、複数の会社の見積書データすべての保存が必要になります。

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