こんにちは、中村亨です。
今回のビジネスEYEでは、コロナ禍で加速した会計監査のDXに関するニュースを取り上げます。
監査業界では2010年代後半からAI活用が模索されてきましたが、監査に使う書類そのものをデジタル化する光学式文字読み取り装置(OCR)やAIの精度はあまり高くなく、現場への導入は停滞していた印象です。
しかしながら最近では、スタートアップ企業を中心に画像認識などのAI技術開発が進行し、読み取り精度が格段に向上したため、大手監査法人を中心に、現場での手続にAIを本格導入するケースが増えているようです。
AIというと、ビッグデータ分析での活用が真っ先に浮かびますが、現場の手続をAIで効率化する取り組みの背景には、監査業界の人手不足があります。
公認会計士試験の合格者はピーク時の3分の1だが・・・
2007年には、4,000人を超えた公認会計士試験合格者ですが、2011年に2,000人を割って以来、1,000から最大でも1,500名程度となっていました。
昨年2021年の合格者は1,360名となり、なだらかな減少の真っただ中にあるのが現状です。
一方で国内の上場企業は3,800社を超え、10年前から6割以上も増えていて、監査を担う人材不足は顕著と言えるでしょう。
合格者が減少しているとはいえ、一方で若手の合格者は増えています。会計士試験の合格者の平均年齢は25.5歳ですから、AI技術を受け入れやすい年代が活躍する土壌になったとも考えられます(もちろん会計監査の知識やスキルの担保も重要ですが)。
会計監査DXの例
これまでは、監査法人で主体となってシステムを内製化する傾向が強かったと思いますが、技術開発が進んでいるスタートアップに一部をゆだねるケースも増えているようです。
上場企業ではESG(環境・社会・企業統治)など非財務情報を開示する動きも活発化しています。財務情報の監査手続を効率化できれば、監査法人は需要が高まる非財務情報の保証業務などに人員を充てやすくなる可能性が上がります。
AIが監査に変革をもたらすことで、組織の変革も待ったなしの状況となります。監査だけでなく、会計業界全般に言えることですが、根幹はヒトによるサービス提供であることに変わりはないので、さらにスキル向上やリーダーシップ醸成、マインドセットも含めた成長を目指していかなければ、と改めて感じました。
(参考: 2022年10月16日│日本経済新聞電子版)
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