不要な土地を国に返却できる「国庫帰属制度」(Vol.554)


中村亨の「ビジネスEYE」です。

不要な土地を国へ返却する事ができる『国庫帰属制度』の運用が、2023年4月27日より施行されます。
2021年4月に国会で成立したこの法案は、背景として土地利用ニーズの低下や土地を相続したものの、土地を手放したいと考える方が増加していることがあげられます。
相続放棄以外の対応策が出たことにより、制度の利用者は増えるのではないでしょうか。国庫帰属制度の概要、メリット・デメリットをお伝え致します。

国庫帰属制度とは?

相続又は遺贈により土地を取得した方(共有も含む)が法務大臣に対して、その土地の所有権を国庫に帰属させることについて、承認を求めることが出来る制度です。

ただ、管理を国へ転嫁する為、土地の性質に応じて算出された10年分の管理費用を負担金として納付する必要があります。この法律によって相続等で取得した土地を国に引き取ってもらうことが出来るようになります。

なぜ創設されたのか

土地を相続したものの、管理が疎かになることや土地利用のニーズの低下に伴い、その土地を手放したいという考えが増加しているものの、一部の財産のみを相続し不要な財産を放棄することが現在の法律で認めていない為、制定されたと考えられます。

どんな土地が対象になるのか

対象の土地に関する要件は10項目あり、どれか1つでも該当した場合は承認されません。よってどんな土地でも対象になる訳ではないので、活用するためには高いハードルがあります。

下記10項目に該当しない土地

1.建物が存在する土地
2.担保権や用益権が設定されている土地
3.通路など他人によって使用されている土地
4.土壌汚染がある土地
5.境界不明など権利関係に争いがある土地
6.管理するのに過分の費用・労力を要する崖がある土地
7.車両・樹木・工作物などが地上に存在する土地
8.除去が必要な埋設物が地下に存在する土地
9.隣地所有者と争訟をしなければ使えない土地
10.以上に定めるほか管理するのに過分の費用・労力を要する土地

手続きの流れについて

①承認申請

申請書と必要書類を提出し審査手数料を支払う。提出先は法務局と思われます。

②法務大臣の要件審査及び承認

要件を満たした場合、法務大臣より承認の通知がされます。

③負担金の納付と帰属

負担金額は、承認と合わせて法務大臣より通知されます。承認通知を受けてから30日以内に納付しない場合は、承認の効力が失われますので注意が必要です。納付が終了した時点で国庫に帰属されます。この負担金は政令で定められる予定で、現状の国有地の標準的な管理費用(10年分)は原野で20万円、市街地の宅地(200㎡)で80万円と言われています。

制度のメリット・デメリット

メリット

・相続放棄以外で土地を手放すことが出来る。
・固定資産税や維持費等の負担がなくなる。
・空き家などの近隣トラブルを回避できる。

デメリット

・要件のハードルが高い。
・共有の場合は全員の同意が必要である。
・国に無償で土地を手放すことになる。
・相続人に一定の金銭負担がある。

どんな人が活用すべきか

まずは離れた場所に住んでいて土地の管理が困難である方、その他には買い手を見つけることが困難な地方の土地を取得された方、また、要件を満たせば田畑や山林も帰属の対象となる可能性もありますので、そういった不動産を相続した方も検討されてもいいと思います。

国庫帰属制度はどの時点の相続から可能かなど現時点で不明確な点が多いです。また、適用される土地も限定されていて活用が難しい場合もあります。始めからこちらの制度の利用を前提に分割対策を行うとかえって大きな落とし穴にはまる可能性がありますので、最終手段として検討する方がいいかもしれません。

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