セクシュアルマイノリティと職場環境(Vol.555)


中村亨の「ビジネスEYE」です。

近年、セクシュアルマイノリティ(性的少数者)を表す「LGBT(レズ・ゲイ・バイセクシュアル・トランスジェンダー)」という言葉の認知度は急速に高まり、多くの人が耳にする言葉となりました。

日本の民間団体による調査では、人口の8%~10%前後、つまり10人~13人に1人がLGBTと言われており、企業においてもLGBTに配慮した職場環境を整えることはきわめて重要な課題となっています。企業はどのような点に注意すべきなのでしょうか。判例とともにご紹介します。

ハラスメントに関する問題

職場におけるジェンダー問題といえば、「セクハラ」を思い浮かべる人も多いのではないでしょうか。セクハラは、男女雇用均等法において「性的指向や性自認にかかわらず、性的な言動により職場環境等が害されること」を禁止していますが、それに加えてパワハラ防止法に基づく指針(令和2年厚生労働省告示第5号)では、次のような言動がパワハラにも該当するものとしています。

「精神的な攻撃」に該当する例

人格を否定するような言動を行うこと。相手の性的指向・性自認に関する侮辱的な言動を行うことを含む。(SOGIハラ・ソジハラ)

※「SOGI」とは、好意を抱く相手の性別(Sexual Orientation)と自身の認識する性(Gender Identity)を指す言葉。性的指向や性自認に関する差別的な言動や嫌がらせをSOGIハラと言います。

「個の侵害」に該当する例

労働者の性的指向・性自認や病歴、不妊治療等の機微な個人情報について、当該労働者の了解を得ずに他の労働者に暴露すること。(アウティング)

セクシュアルマイノリティの特徴は、本人が「カミングアウト」しなければ、誰にも「見えない、分からない」ということです。日本ではLGBT当事者の8割以上がカミングアウトしていないという調査結果も出ており、諸外国に比べ、カミングアウトする人が少ないのが実情です。

その理由としては、会社や個人の理解が十分ではなく、知らせた時に不利益を受けるのではないか、ハラスメントを受けるのではないかという不安が要因のひとつとなっています。

望まない人に公表を強要することはあってはいけませんが、本人が必要に応じ、安心して職場に伝えられる環境づくりが必要となります。

企業として取り組むべき対応

実際に従業員からSOGI(性的思考と性自認)について就労上の困難があるとの訴えがあった場合、どのように対応すべきでしょうか。最近の判例を見てみましょう。

【人事院事件 東京高裁 令和3年5月27日判決】

戸籍上は男性で性自認が女性であるトランスジェンダーの経済産業省の職員が、職場の女性用トイレの使用が制限されているのは不当な差別であるとして国を訴えた裁判がありました。

1審は不当、2審はトイレの使用の制限は不当ではないとの判断でした。経済産業省は、原告の希望や主治医の意見も勘案して、一定の範囲で女性用トイレの使用を認めていたことや全職員にとって適切な職場環境を構築しようとしていた姿勢が認められ、違法性が否定されました。

今後は、ジェンダーレスが進み、セクシュアルマイノリティに対する方針を公表する企業もさらに増えてくることが想定されます。セクシュアルマイノリティについて各従業員が理解を深める取り組みをすることは、職場全体の環境や雰囲気に安心感をもたらし、セクシュアルマイノリティの方に限らず働きやすい職場につながります。

これからの企業においては、多様な人材が活躍できるようハラスメント問題にとどまらず、LGBTの方に対する「理解」や「意識」を醸成するための研修なども積極的に行っていくことが肝要です。その中で企業としてできること、できないことを整理し、困難を感じている従業員のニーズを丁寧に聞き取り、労使双方に負担の少ないやり方を考える必要があります。

厚生労働省では、セクシュアルマイノリティの方に対する公正な採用選考、更衣室の使用、社内での性別や名前の取扱い、健康診断での配慮、相談窓口の設置などについての取り組み事例を紹介していますので是非、ご参照ください。

―厚生労働省―
多様な人材が活躍できる職場環境づくりに向けて~ 性的マイノリティに関する企業の取り組み事例のご案内 ~
https://www.mhlw.go.jp/content/000808159.pdf

 

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