2026.08.25
相続
次世代への承継は負担が重すぎる!
~事業承継税制の活用~

事業承継を検討する経営者において、自社株式の移転に伴い本人や後継者が負う金銭的コストは憂いの種だと思います。
自社株式移転にかかる税金はときに数億円に及ぶことがあり、個人負担でそれを負うことは難しいため、
「有能な後継者候補がいるのに資力不足が原因で継がせられない」というジレンマに陥る企業は少なくありません。
そこで活用できるのが「事業承継税制」です。
一定の条件を守ることで納税ゼロでの承継が実現可能で、法人オーナーに強いるリスク・プレッシャーを軽減することが可能です。
そこで今回は事業承継の有効な手段として、経営者が知っておきたい事業承継税制の活用について解説します。
1事業承継税制とは?
非上場会社の経営者を対象に自社株式移転に課される相続税(もしくは贈与税)の納付を猶予する制度です。
猶予の前提は企業活動の継続であり、後継者の代で一定の要件を満たせば猶予額が免除されます。
実質的には「同族企業向けの課税免税制度」として機能しており、後継者に経営に集中してもらうためにも有効な制度と言えます。
本税制の目的は、法人オーナーの個人負担を軽減することで世代交代を後押しし、
廃業数を減らすことで国全体での生産力を維持することが、制定の狙いとされています。
2一般措置と特例措置の違い
事業承継税制は従来から規定として存在していたものですが、とても使い勝手が悪く、それを一般措置と呼ばれています。
一方、期間内に都道府県へ事業計画書などを提出することで、一般措置に比べて非常に使いやすくなった「特例措置」が設けられています。
ただし、現状では特例措置は2027年12月末で終了予定であるので、期限内に適用をしなければいけません。
(2026年8月末現在)
一般措置と特例措置の違いは下記の通りで、それぞれ特徴を見ていきましょう。
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内容 |
一般措置 |
特例措置 |
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①納税猶予対象の上限 |
「移転した全株式数の2/3」 かつ「課税額の80%」 |
「移転した全株式」 かつ「課税額の100%」 |
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②雇用継続条件 |
実質的に条件撤廃 |
承継後5年間で平均8割以上 |
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③経営困難時の扱い |
全額課税される |
課税されるが一部免除 |
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④適用対象となる後継者の数 |
最大1人 |
最大3人 |
最も注目に値するは、①により「納税ゼロ承継」が出来るようになった点です。
②~③の変更では、後継者の代で経営状態が落ち込んだときの税負担リスクが軽減されています。
④においては、承継後に共同経営者間での不平等をなくすことに成功しています。
適用申請時の「納税ゼロ承継」が可能に
一般措置では、納税猶予対象となる株式数・猶予割合の2点に制限がありましたが、特例措置では各上限が撤廃され、
後継者の代において「承継時にかかる税の全額猶予」が実現可能です。
「8割以上の雇用確保」が実質不要に
従来の税制では、納税猶予を継続する条件として「雇用平均を承継後5年間の平均で8割以上に保つこと」が盛り込まれていました。
この要件の問題点は、もともと従業員数が少ない小規模事業者はもちろんのこと、経営不振に陥り雇用整理を決めた法人も、納税猶予を継続しにくい点です。
特例措置では、雇用平均に関する継続条件は実質的に撤廃されました。
税制適用中に5年間平均で8割以上の雇用を維持できなかった場合でも、都道府県に報告書を提出することを条件に、納税猶予を受け続けることが出来ます。
「経営困難時の課税額再計算」が可能に
廃業または事業譲渡を行った場合、その時点で納税猶予が終了します。従来の制度において問題だったのは、
猶予終了の背景=経営困難であっても一律で猶予額全額が課税される点でした。
不況のあおりを受けて売上が低迷しており、経営継続を断念した場合でも課税されてしまうため
こうした課題を解決するため、特例措置は「事業の継続が困難な自由が生じた場合の納税猶予額免除(経営困難時の課税額再計算)」が設けられました。
「複数の後継者による承継」が適用対象に
従来の税制では、税制適用できる後継者は1人に限られます。
複数人の跡継ぎで協力し合って会社を維持したいと考えるケースでは、後継者間で不平等が起こるという問題が発生していました。
特例措置であれば税制適用の対象となる後継者は最大3人まで認められます。
価値観や企業経営の実情が大きく変わった現代、子1人(長子など)に承継させるという常識は崩れつつあります。
今回の法改正で、兄弟姉妹で力を合わせて会社経営を続けてほしいと願うオーナーの実情にも沿うようになりました。
3特例措置の事業承継税制を活用するための手続き
事業承継税制を活用するには、特例措置を利用する必要があるので、期日までに特例承継計画の提出したうえで、
承認申請書および贈与税または相続税の申告期限までに適用手続きを済ませる必要があります。
承継による税申告期限から5年間(=承継期間)は「猶予対象株式全体の保有」が義務となり、
猶予を受け続けるための適用継続要件も満たし続けなければなりません。
承継期間が過ぎれば、猶予対象株式の一部譲渡が認められ、適用継続要件も緩和されます。
4まとめ
後継者に会社を引き継がせるとき、株式移転に伴う相続税・贈与税をどう節約するかが課題となります。
納付猶予後に一定要件を満たせば課税免除される「事業承継税制」の活用を検討することで、後継者の資力不足に対する不安を解消できます。
本税制の適用にあたっては「今の業態(非上場かつ中小規模)のまま5年間事業継続しなければならない」という点や、
様々な要件をクリアしなければいけませんが、 上手く制度活用できれば、円滑に事業承継が可能になるので、
事業承継にお悩みの方はぜひ検討をすることをおすすめいたします。
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