経営メモ「ユニコーンの正体」(Vol.70)


アメリカの巨大ユニコーン(時価総額1,000億円以上の未上場企業)であるウィーワーク(本社:ニューヨーク)をご紹介します。

昨年2月の日本上陸後、ANGLE vol.63(2018年8月号)の経営メモでも取り上げましたが、一見レンタルオフィス事業者にしか見えない彼らと、その他の事業者との違いは何なのでしょうか。

スタートアップ企業の動向を調査・分析するCBインサイツが公表したレポートを基に、筆者もその正体に迫ってみたいと思います。
(参考:日本経済新聞電子版/2019年5月27日)

 

現状

有料会員(入居者)27か国、40万人以上—
マンハッタンでは、JPモルガン・チェースやゴールドマンサックスを上回り、最大のオフィステナントとなったWeWork(ウィーワーク)。
東京でも六本木アークヒルズやGINZA SIX、丸の内北口ビルなどで開設し、横浜・大阪・福岡にも展開しています。今年中に30施設以上を目指しているそうです。

近くロンドンでも民間最大のオフィステナントとなる見込みで、その拡大の勢いは非常にすさまじいものです。

□ では、ウィーワークはどうやって稼いでいるのでしょうか。

□ 答えは「まだ稼いでいない」が最も近いでしょう。

 

創業から9年ずっと赤字だと発表されています。昨年に比べて会員数が2倍強の伸びとなっていても、過度に評価されているとの指摘も少なくありません。

主要株主のソフトバンクグループも、株式市場の動向や複数の投資パートナーの反対で、当初よりも出資額を縮小したといいます。

 

ビジネスモデルの正体

その他のレンタルオフィス事業者との一番大きな違いは、イノベーションです。
文字通り、既存のモノである不動産に対して、ビッグデータをフル活用するなど斬新な切り口で新たな価値=「コワーキング(協業)によるビジネスチャンスの創出」を生み出している点に尽きると思います。

そういった意味では、彼らはテクノロジー企業であり、創業者であるCEO、アダム・ニューマン氏が「ウーバーに車が必要で、エアビーアンドビーにマンションが必要なように、当社にはたまたまビルが必要だった」と発言している通りではないでしょうか。

 

<WeWork(ウィーワーク)の基本的なサービス内容>

□ WeWorkはビルオーナー(不動産会社)とオフィスの賃貸契約を結び、月決めでユーザーに転賃する
□ 法人やフリーランスの顧客は、内装・レイアウト作業や、受付やOA・清掃といったオフィス運営から解放されるだけでなく、ビジネスマッチングなどのコミュニティサービスを受けられる

 

WeWorkが「基本的な」と謳うサービスも、内容を見る限り、オリジナリティにあふれた付加価値がちりばめられています。このように、誰にでも出来そうでて、出来ないことをやってのけた点に、ユニコーン企業として突出した理由がありそうです。

今後はビッグデータをフル活用して、オフィス体験の最適化を目指すウィーワーク。協業に関心のない企業にとっても、なくてはならない存在になるのではないでしょうか。

企業が更なる成長を見据えていくには、やはりイノベーションの力が必要だと言わざるを得ませんね。改めて、既存のビジネスを様変わりさせることの意義を感じました。

 

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